2009年10月01日

とうさん100選1−10

No1:破産手続と憲法的保障
【事案の概要】
@ Xは債権者申立てにより破産手続開始決定を受けた→Xは申立て債権および破産原因の不存在を主張し抗告→棄却→Xは特別抗告=破産開始決定および抗告棄却決定は口頭弁論を経ないでなされた以上、憲法82条・32条。76条3項に反する。
A Xは破産者の免責決定に対して異議を申し立てたものの免責決定が下された→Xが抗告→棄却→Xは特別抗告=免責決定について口頭弁論の機会を保障しないのは憲法32条に反する。

【判 旨】
@に対して:抗告棄却
 「憲法82条に言う裁判とは固有の司法権の作用に属する裁判を言う。…(一方)破産裁判所がする抗告棄却決定は…固有の司法権の作用に属する裁判には該当しない」
Aに対して:抗告棄却
「免責の裁判は…本質的に非訟事件についての裁判であるから…憲法32条に反するものではない」


NO2 倒産手続と憲法的保障(2) 財産権の保障
【事案の概要】 XはA株式会社の更生債権者。Xが更生債権を届け出。更生管財人が届出金額に異議、しかしXは債権確定の訴え起こさず。⇒Xの更生債権は異議の分少なく認定され、他の一般更生債権者は50%免除、Xの更生債権は約87%免除。Xは、Aのごとき営利目的の私企業を他の企業の一方的犠牲の上に保護するのは私人の財産権を侵し、憲法29条違反として特別抗告。

【決定要旨】 抗告棄却。会社更生法は、「企業を破産により解体清算させることが、ひとり利害関係人の損失となるに止まらず、広く社会的、国民経済的損失をもたらすことがあるのにかんがみ、窮境にはあるが再建の見込みのある株式会社について、債権者、株主その他の利害関係人の利害を調整しつつ、その事業の維持再生を図ることを目的とする」。「…更生手続によって更生債権者らの財産権が制限されることは明らかであるが、右法条の定める財産権の制限は、前記目的を達成するためには必要にしてやむを得ないものと認められる。」
しかも更生手続は裁判所の監督のもと法定の厳格な手続に従って進められるし、綿密な規定に基づいて関係人集会による審理・議決を経たうえ、裁判所の認可によって効力を生ずる。⇒各規定は、公共の福祉のため憲法上許された必要かつ合理的な財産権の制限を定めたものと解するのが相当であり、憲法29条に違反しない。


NO3 財産区の破産能力
 財産又は営造物を有するいわゆる財産区は、市町村の一部で、市町村条例をもって区会を設置すると否とを問わず、また、…国の行政区画たる性質を有すると有さざるとに関せず、法人格を有し、私法上の権利能力を享有して私法関係の当事者となり得るも、その性質上これを解散して一般的清算手続をこれに許容し得べきものではない。
 従って、市町村の一部たる財産区は破産宣告を受けるべき適格を有しないものと解するのが相当。(原文はカタカナ)


NO4:支払い不能(1)
【事案の概要】
 Xは支払い不能の状態にあるとして破産開始決定を受けた→Xが抗告=@支払い停止していない、A支払い不能ではない

【判 旨】:抗告棄却
・「債務者が支払い不能の状態にあるものと認めるときは、支払い停止について判断するまでもなく、破産開始決定をするべき」
・ 「支払い不能とは、破産者が一般的に金銭債務の支払をすることが出来ない客観的状態」をいう。」「弁済力は財産・信用及び労務の三者から成立しているものと解されるから…順次検討」


5 支払不能(2) 不法行為債務の場合 ※東京地裁決定
【事案の概要】 ゴルフ場会員権を購入したXら債権者が、販売業者Y株式会社について破産手続開始申立て。債権者が破産の申立てを行う場合、@債権の存在、A破産手続開始原因の事実を疎明しなければならない(18条2項)。@は不法行為に基づく損害賠償債権であり、認められたが、Aの「支払不能」の認定が問題となった(「支払停止」なら直接証明しやすいが、「支払不能」=『債務者が支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(2条11項)』であって証明が困難)。
【決定要旨】
  間接事実の積み上げ(@〜D)、及び債務者が多数の会員からの損害賠償請求に応じることができない状態にあることを自認した事実(E)から、支払不能の状態は明白であると判示した。なお、間接事実は右のとおり⇒@週刊誌の記事をきっかけに各地の弁護士会に被害者らの相談が殺到し弁護団が結成、A明確に損害賠償請求権を行使する意思を表明する会員数1万6000人余、請求金額は300億円を下らない、BYの資産に巨額の担保権が設定、C会員権販売により集めた資金もYの手元に無く、貸付金等の早期回収も困難、DYの建設請負代金保証債務も未履行で、工事再開の目処立たず。


6 支払停止−支払不能の推定
<事実の概要>
 X(抗告人)は手形の不渡りを出し(約2億円)、銀行取引停止処分を受ける。そこで複数の債権者から破産手続開始決定申立て。うち1社の申立てにつき破産手続開始決定が宣告。これに対しXが抗告。理由は2点。@Xは不渡り後も支払を継続しており、また、債権者からの支払の猶予も受けている。したがって、なお支払停止とはいえない。A仮に支払停止であっても、Xは、建設業者であり、仕掛かり中(8割完成)の建物の所有権を有している。これを完成させ売却すれば12億程度の弁済資金が見込めるので、なお、支払不能とはいえない。
【決定要旨】
 抗告棄却。
1 支払不能を推定せしむる支払停止とは弁済資金の融通がつかないために、一般的、継続的に債務を弁済することができない旨を明示又は黙示的に表明する債務者の主観的な態度を指称するが、債務者振出の巨額の手形が不渡処分に付せられた場合においては、債務者は、その個人的な希望ないし決意はともかくとして、原則として、その後における債務の支払を一般的に停止する意思表示をしたものと解するのが相当である。
 けだし、現在の手形社会において、手形交換所から銀行取引停止処分に付せられるが如きは、信用を重んずべき商人にとっては致命的な打撃を被ることを意味し、何人もその防止対策に尽力するところであるから、巨額の手形不渡の事実は、特段の事情がない限り、…その後における債務の支払を一般的に停止せざるをえない状態に陥ったと認めるほかはなからである。
2 一旦支払停止の状況が生じた後においては、若干の債権者に対し、一時的、散発的に多少の支払がなされたとしても、債権者の数と金額及び弁済の規模と態様を全体的に観察して、継続的、一般的に弁済能力を回復したと認められない限り、未だ支払停止の状態を解消したものとは言い難い。
<コメント>
1 債権者が破産申立てをする場合、破産原因の事実の疎明が必要(18U)。法人の場合、破産原因は支払不能(15)と債務超過(16)がある。
 そして支払停止があれば支払不能が推定される(15U)。これは事実上の推定であって立証者は、推定事実(支払不能)を立証してもよいし、前提事実(支払停止)を立証してもよい。どちらの場合も推定事実の法効果(破産手続開始)を発生させる。
 前提事実(支払停止)が立証された場合、これを覆す立証は本証となり、債務者は支払停止が存在するにもかかわらず支払不能ではないことを立証しなければならない。本件でXがA12億もの弁済資金が見込まれる旨の主張はこれに該当する。
2 支払停止の定義は上述【決定要旨】1.の通り。
 論点として、破産法は否認権行使と相殺禁止において支払停止を要件としているが、破産原因としての支払停止と否認権行使や相殺禁止の場面における支払停止は同義か?
 通説は同義とする。
 これに対し、両者の二義性を認め、破産原因の場合、支払停止は主観的な行為のみでよく、かつ、破産手続開始決定までに支払停止が継続していなくてもよいが、否認権行使・相殺禁止の場合には、主観的な認識のみならず客観的に支払停止が持続している必要があるとする説もある(二義説)。
 どちらの見解に立っても、破産原因の前提としての支払停止が破産手続開始決定時に存在していることが必要。結局、両者の見解の違いは、債権者によって破産申立てがなされた場合、開始決定までに支払停止が継続していたことを債権者が立証するのか(二義説)、それとも債務者にその解消の立証を要するのか(通説)という違い。(なお、通説的見解に立ちながら、一種の間接反証責任として持続性の解消を債務者の負担とする説もある)
 二義説は、破産原因時には説得的であるが、否認や相殺禁止の場面で、債務者の客観的経済状態の悪化の持続を管財人に負担させることになり不当であると批判される。
3 本件で通説的見解に立つと、支払停止の持続性を債権者が立証すべきことになるが、裁判所は事実上の推定を行ってこれを認めた。すなわち手形不渡による支払停止があれば、例外的な場合を除いて、「通常は継続している」との経験則を適用した。事前の手形不渡からダイレクトに開始決定時の支払不能を認定判断することはあくまで省略形であることに留意すべき。


NO7:債務超過の判断要素
【事案の概要】
 Y会社の取締役が失踪したため、債権者への支払が滞った→弁護士が債権者集会の了承を得て債務整理を開始→債権者の一部と弁護士との間で不動産処分方法について対立→そこで債権者Xが破産申立て:YはXに対して1億7300万円および抵当権者Eに対して2億7300万円の債務を負担。そのため3億円以上が債務超過および支払不能であるとして破産申立てをした→Yは破産原因はないとして抗告:@ほとんどの債権者からは18%の弁済を条件に残余債務の免除を受けている。AXの手元には4500万円の現金と少なくとも2億3000万円の評価額建物が2棟ある。BEに対しても5億から6億円の評価額のY個人不動産を別途担保提供している。

【判 旨】:抗告棄却
 「本件債務免除は“一次配当意外に配当原資が得られないときは”という条件付きであると解されるところ、その条件を成就するに足りる事実ない」「法人の破産原因としての債務超過の事実をかくてするに際しては、その法人の財産をもって債務を完済することができるか否かを判断すれば足り」個人的な保証が存するか否かは考慮すべきではない。」


8 破産手続開始申立てに対する事前協議・同意条項の効力 ※東京高裁決定
【事案の概要】 Yは破産会社、Xは破産会社の従業員ら。Xらで組織する労働組合とYとの間で『会社は、組合との事前協議および同意なしには破産申立て等を行わない』旨の覚え書。しかしYは協議なしに自己破産申立て。そこでXが破産申立て&破産宣告はいずれも無効として、抗告。
【決定要旨】 抗告棄却。このような約定があっても、その債権者に対する債務不履行になりうるだけで、破産申立てが違法・無効とはなりえない。理由=破産手続は、強制的に債務者の全財産を管理換価し、総債権者に公平な金銭的満足を与えることを目的とする裁判上の手続であり、いわば総債権者の利益のためのもの⇒一部特定の債権者その他の権利者との間の合意によって申立てを制限されるとするのは相当でない。


9 債権質の設定者の破産手続開始決定申立権
 債務者に対して債権を有する債権者が、当該債権に質権を設定した場合、債権者は当該債権に基づいて破産申立てをすることができるか。
 判旨。債権が質権の目的とされた場合において、質権設定者たる債権者は、質権者の同意があるなどの特段の事情のない限り、当該債権に基づいて債務者に対して破産の申立てをすることができない。
 なぜなら質権の目的とされた債権については、原則として、質権設定者はこれを取り立てることができず、質権者が専ら取立権を有すると解されるところ(民法367条参照)、当該債権の債務者の破産は、質権者に対し、破産手続による以外当該債権の取立てができなくなるという制約を負わせ(100T)、また、本件のように当該債権の債務者が株式会社である場合には、会社の解散事由となって(会社641(6))、質権者は破産手続による配当によって満足を受けられなかった残額については通常その履行を求めることができなくなるという事態をもたらすなど、質権者の取立権の行使に重大な影響を及ぼすものであるからである。


NO10:国庫仮支弁の必要性
【事案の概要】
 Xは破産申立て。
 原審は破産宣告を行うための費用が3000万円必要と判断。
 ところがXは破産予納金として1000万円以上は用意できず。
 このような状況の下で原審は@Xの資産は換価価値が低く、一般債権者にとって配当が期待できない結果、破産的精算を行う意味が乏しい、A破産手続による公益的要請も認められない、B仮支弁しても費用を回収できる見込みがない以上国庫仮支弁の存在も重視できない、という理由から本件破産申立ては権利濫用として許されないと判断。
 そこでXは、破産廃止制度がある以上配当可能性が乏しいことをもって破産宣告を否定する理由にはならないはずだ、として抗告。

【判 旨】:抗告棄却(確定)
 「破産費用を常に国庫に立て替えを求めうると解するのは疑問がある。立替金を回収できない場合」「私利を追求した一企業の倒産の後始末まで国民の負担で行うことまで法が予定し、国民が許容しているとは考えられない」「個人消費者の自己破産申立ての場合であって、費用を負担されることが酷であるとか、公益上の必要性が特に強い等の例外的な場合に限り、仮支弁出来るにとどまる」


posted by あひるねこ at 00:00| とうさん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月23日

ぎょうせい 論点15

論点セレクト15

1.処分性(行政事件訴訟法3条2項)

 行政上の法令に基づくすべてを意味するものではなく、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を画することが法律上認められているものをいう(最判昭39.10.29)。


@公権力主体性、 
A直接法効果性



2.原告適格(行政事件訴訟法9条1項、2項)

 「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。

 具体的には、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益をもっぱら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、かかる利益も右にいう法律上保護された利益にあたり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう(最判昭53.3.14)。

→ポイントは、9条2項の文言を使いこなせるかどうか。


3.国家賠償請求における違法性(国家賠償法1条)

 取消訴訟は公権力の行使に対して不服を申し立てる訴訟であるが、国家賠償請求訴訟はあくまで民事訴訟の一つとして金銭賠償を求めるにすぎず、両者は制度的に異なる。
 そこで、違法とは、公務員が職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と行為をしたと認め得るような事情がある場合をいうものと解する(最判平5.3.11)。
→取消訴訟との違い



4.裁量権の逸脱・濫用(行政事件訴訟法30条)

<伝統的基準>
@事実誤認 Ex マクリーン
 「その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか」
A目的違反・動機違反
B信義則違反
C平等原則違反(憲法14条1項)
D比例原則違反
 「社会通念上著しく妥当性を欠くかどうか」

<判断過程基準>
@判断過程に着目して合理性を審査する方法
 「判断の過程に看過し難い過誤があり、これに依拠した場合に違法となる。」
A判断過程の合理性の審査
 他事考慮等


5.理由付記(行政手続法8条1項本文、14条1項本文)

 同上の趣旨は、@行政庁の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに、A拒否の理由を申請者に知らせることによって、その不服申立てに便宜を与えることにある。
 この趣旨から、付記すべき理由としては、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して拒否処分がされたかを、申請者においてその記載自体から了知しうるものでなければならず、単に根拠規定を示すだけでは足りない(最判昭60.1.22)。
→理由の追加、理由の差替


6.重大かつ明白な瑕疵

 重大かつ明白な瑕疵というのは、処分の要件存在を肯定する処分庁の認定に重大・明白な瑕疵がある場合を指すものと解すべきである。そして、瑕疵が明白というのは、処分成立の当初から、誤認であることが外形上、客観的に明白である場合を指すものと解する。


7.違法性の承継

 行政上の法律関係は、早期に安定させる必要があるから、違法性の承継は認められないのが原則である。
 しかし、取消訴訟の排他的管轄に服する行為について、救済の余地を拡げる必要もある。
 そこで、@一つの手続ないし過程において複数の行為が連続している場合において、Aこれらの行為が結合して一つの法効果の発生を目指す場合に例外的に違法性の承継が認められると解する。


8.行政指導の限界(行政手続法32条、33条)

<建築確認留保の事案>
 許可あるいは確認申請に対して、行政庁が裁量権を有する場合、行政庁は行政指導に付随して処分を留保することができるか。
 思うに、行政活動が、社会の複雑化に伴って市民生活に深く介入せざるを得ない現代福祉国家にあっては、行政指導が要求される。
 そこで、@行政指導は、それに対する相手方の不服従の意思表示が真摯かつ明確なものであること、およびA相手方の不服従が社会通念上正義の観念に反するといえないという要件を具備する場合に違法になるものと解する。
 ※不作為の違法確認訴訟の事案では基準が異なる点に注意を要する。


<教育施設負担金の事案>
 強制にわたるなど事業主の任意性を損なうことがない限り、違法ということはできない(最判平5.2.18)。



9.行政代執行の可否(行政代執行法2条)

 代執行の要件 〜戒告、通知
@「他人が代わってなすことのできる」義務(代執行法2条)
 → 代替的作為義務
A「他の手段によってその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認めるとき」



10.法規命令の限界

 法規命令を制定する行政機関は、法律に違反する命令を制定することはできない。
 そこで、委任の範囲を逸脱した法規命令は違法であると解する。


11.確認の利益 (行政事件訴訟法4条後段)

要件
 @対象選択の適否
 A方法選択の適否
→行政法では重要問題
 B即時確定の利益



12.情報公開法における適用除外(情報公開法5条)
※条文の読み方に注意

個人情報: 原則不開示(5条1号本文)
他の情報: 原則開示(5条2号)



13.公定力の限界

 意義: 行政行為はたとえ違法であっても、行政庁自らが職権により取消しまたは撤回する場合は別段、相手方等の争訟の提起に基づき行政庁または裁判所が取消の措置をとらない限り、一応有効に通用するとの効力をいう。
 → 取消訴訟の排他的管轄

<刑事事件との関係> 余目町公衆浴場事件
 違法な行政処分によって命ぜられた義務に違反したため行政刑罰を科する場合等に、刑事被告人は、当該行政行為が違法であることを抗弁として提出し、罪責を免れることができるかが問題となる。
 思うに、行政刑罰は、適法な行政命令への服従を強いる機能までも有するとみるべきではない。行政行為の公定力は、民事関係における仮の効力を承認するにすぎない。
 そこで、刑事法関係においては被告人は、処分の違法を立証すれば、その無効を主張するまでもなく刑罰を免れることができると解する。

<国家賠償請求との関係>
 行政行為の違法を主張して国家賠償請求をなす場合、行政行為をあらかじめ取消しておかなければならないか。
 思うに、公定力は、行政目的の円滑な実現と法的安定性の要請から、行政行為の効力を維持せしめるためのものであり、違法な行為を適法なものとして通用せしめるものではない。他方、国家賠償請求で問題となるのは、行政行為の違法性の有無であり、効力の有無ではない。
 そこで、行政行為の違法を主張して国家賠償請求をなす場合、行政行為をあらかじめ取消しておく必要はないと解する。



14.行政行為の撤回・取消

<行政行為の取消し>

 行政行為の取消しとは、有効に成立した行政行為について、その成立に瑕疵があることを理由として、その法律上の効力を失わしめるために行われる行政行為をいう。

 取消し原因がある場合、かような瑕疵は速やかに除去されるべきであるから、その取消しについて明示の法律上の根拠は必要でないと解する。

 もっとも、一度行政行為がなされると、それを基礎に新しく法律秩序が形成されていくので、これを取消してしまうと相手方私人及び関係者に不測の損害を与えるおそれがある。

 そこで、取消しによる公益上の必要性と、取消しによって侵害されるであろう私人の権利・利益間での総合的な利益衡量によって個別具体的に判断すべきと解する。


<行政行為の撤回>

 行政行為の撤回とは、行政行為の成立時に瑕疵がないとき、その後の事情により、その法律関係を存続させることが妥当でないということが生じたときに、この法律関係を消滅させる行政行為をいう。

 行政行為の公益適合性をまっとうする見地から、行政行為の撤回に法律上の根拠は不要であると解する。

 もっとも、一度行政行為がなされると、それを基礎に新しく法律秩序が形成されていくので、これを撤回してしまうと相手方私人及び関係者に不測の損害を与えるおそれがある。

 そこで、撤回による公益上の必要性と、取消しによって侵害されるであろう私人の権利・利益間での総合的な利益衡量によって個別具体的に判断すべきと解する。

 ※行政行為の撤回に際しては、原則として聴聞手続が必要であるという点に注意。
 ※両者はパラレルに思考すべし



15.信頼の原則

 信頼保護が認められるためには、@個別具体的措置、A実行活動、B客観的依存性、Cその他の事情を考慮して判断すべきと解するのが相当である。
posted by あひるねこ at 00:00| ぎょうせい | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月22日

ぎょうせいえんしゅう42

【42】
〈1)A市市長は、Xに対して庁舎の一部を5年間の約束で食堂の経営のために使用することを許可した。ところが庁舎を建て替える必要が生じたので,許可を取り消した。その際,移転料等の補償はしたものの,許可による「使用権」そのものに対しては補償を全く考慮しなかった。しかし,Xはこれに対して不満で,「使用権」に対して無補償の許可取消しは違法無効であると主張し,利用していた部屋を明け渡そうとしなかった。
(2) そこで、A市市長は,存置物件の搬出に限って行政代執行法に基づく代執行手続を執ることにして戒告を行った。これに対してXは抗告訴訟を提起し,無効な許可取消しであるから,当然に戒告も違法無効であると主張し,また,たとえ許可取消しが無効でないにしても違法であることに違いはなく,その違法性は戒告処分に承継されるので,戒告も違法であると主張した。さらにXは,存置物件の搬出のみを取り上げ,しかもそれが代替的作為義務に属することを理由として,代執行手続を行うことはできないのであって,民事訴訟あるいは公法上の当事者訴訟で争うべきであると主張した。
(問1)上記(1)で,Xの主張は正当といえるか。
(問2)上記(2)で,Xが主張するように,もし許可取消しが違法とされる場合,その違法性は戒告に承継されるか。
(問3)上記(2)で,Xが主張するように,存置物件の搬出のみをねらったA市市長の代執行手続は不適法といえるか。A市は,民事訴訟又は公法上の当事者訴訟で明渡しを求めるべきかどうか。
〔素材は国T平成15年度選択問題〕


第42問 解答例
第1 問1
1 使用許可の取消し(地方自治法238の4\)に際し、「使用権」に対する補償が必要とするXの主張は正当か。「使用権」に対する補償の要否が問題となる。
2 ↓ この点
本問の「取消し」は、適法に与えられた使用許可の効力を後発的事情から,将来に向かって奪うものであり、講学上の撤回にあたる。
↓ そこで
撤回に際し、損失補償が必要かを検討する。
3(1) ↓ この点
撤回は、瑕疵なく成立した行為の効力を、後発的事情を理由として消滅させるものである。
↓ そして
撤回の原因が本人の帰責事由によらない場合、私的利益を公益のために−方的に奪うことになる。
↓ そうだとすれば
公用収用に準じて正当な補償が必要と考えるべきである。
↓ そして
(2) 本問の使用許可の取消しは、「庁舎を建て替える必要」という、Xの帰責事由によらない撤回であるので、正当な補償は必要である。
4 ↓ では
「使用権」に対する補償が必要な補償に含まれるか。
(1) ↓ この点
使用許可に際しては対価の支払いがないのが通常であり、また公用財産の目的外使用許可は地方自治法238条の4第9頂からも明らかなように、公益理由による取消しが予定された地位にすぎない。このことは、「使用権」に期間の定めがあったとしても、期間内に公益理由が生じれば取り消されることが予定されている以上、同様といえる、
↓ そこで
「使用権」に期間がある場合も、@対価の支払いがあり、それを償却するに足りないと認められる期間に撤回された場合や、A使用許可に際し別段の定めがある場合を除き、「使用権」そのものについては補償の対象とならないと考える。
(2) ↓ 本問では
@A市に対価が支払われたという事情もなくA使用許可に際し別段の定めもない。
↓ よって
「使用権」そのものについては、補償の対象ではない。
5 ↓ 以上より
Xの主張は正当とはいえない。

第2 問2
1 許可取消しの違法は、戒告に承継されるか。違法性の承継の可否が問題となる。
2(1) ↓ この点
行政目的の早期達成、行政上の法律関係の早期安定のため、行政行為には、不可争力がある(行政事件訴訟法14参照)。
↓ にもかかわらず
一般的に違法性の承継を認めると、先行処分の違法性を後行処分がある限りいつまでも争えることになり、不可争力を認め、取消訴訟の出訴期間を短くした法の趣旨を没却する。
↓ よって
行政行為の瑕疵はそれぞれ独立して判断されるべきであり、違法性の承継は原則として認められないと考えるべきである。
(2) ↓ もっとも
常に争えないとすると、先行処分の違法性を争いたい者に酷な場合もある。
↓ そこで
@先行行為と後行行為とが連続して一連の処分を構成し,Aこの一連の処分を経て初めて終局的な効果が生じる場合には違法性が承継されると考える。
3 ↓ これを本問についてみると
先行処分たる使用権の取消しはXの庁舎使用権を剥奪し、Xに庁舎の明渡義務を課す行為であり、後行行為たる戒告はXの明渡義務の履行を強制するための処分であり、まったく別個の目的を有し、両処分は@一連の手続とは、評価できない。
↓ よって
違法性は承継されない。

第3 問3
1 前段について
荷物搬出のための代執行は許されるか。
(1) ↓ この点
行政処分には自力執行力があるので、裁判所の判断を経ずに執行することができる。
↓ そして
代替的作為義務については、一般法たる行政代執行法により代執行が認められる。
↓ これは
人権侵害の恐れのもっとも少ない代執行の方法を原則的手段とすることで、行政目的の達成と権利保障の調和を図ったものである。
↓ とすれば
代替的作為義務である荷物の搬出について、代執行の方法をとることは適法とも思える。
(2) ↓ しかし
Xは荷物の搬出義務を負ってはいるが、それは庁舎明渡義務の付随責務にすぎない。主たる義務である明渡義務について強制執行できないにもかかわらず、付随義務たる荷物搬出義務の強制をすることは、実質的に見て法律上強制できない明渡義務を強制することになり、明渡義務の強制を否定している法の趣旨を没却する。
↓ そこで
荷物搬出義務の代執行の方法をとることはできないと考える。
(3) ↓ したがって
A市の代執行手続は不適法である。

2 後段について
A市は民事訴訟または公法上の当事者訴訟で明渡しを求めるべきか。
(1) ↓ まず
法律による自力執行ができない場合、行政上の義務履行確保のための訴訟を提起できるか、個々の権利・法律熊係に関する争いで法令の適用により終局的解決ができること(「法律上の争訟」裁判所法3T)にあたるかが問題となる。
↓ この点
国または公共団体が専ら行政権の主体として行政上の義務の履行を求める訴訟は、一般公益のための訴訟であり、自己の権利利益の救済を日的としていないので「法律上の争訟」にあたらず許されないのが原則である。
↓ しかし
行政主体が財産権の主体として自己の財産上の権利利益の救済を求めて提起する場合は、「法律上の争訟」にあたり許される。
↓ そうだとすれば
本問のA市の庁舎明渡訴訟は、庁舎の建替えのために行われており、A市が財産権の主体として起こす訴訟であり、「法律上の争訟」にあたるといえる。
(2) ↓ では
民事訴訟によるべきか、それとも公法上の当事者訴訟によるべきか。
↓ この点
いずれの訴訟によるべきかは、訴訟物が公法上の権利か私法上の権利であるかによって判断すべきである。
↓ そして
A市がXに対して主張するのは、建物の所有権に基づく返還請求権としての建物明渡請求権である。これは私法上の権利である、
↓ そうだとすれば
AX間の争いは私法上の法律関係についての紛争であるから、民事訴訟によるべきである。
(3) ↓ したがって
A市は民事訴訟で明渡しを求めるべきである。
以上


posted by あひるねこ at 11:30| ぎょうせい | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。