2009年10月04日

とうさん100選31−40

NO31:保証・担保の供与と無償否認
【事案の概要】
 A会社は資金繰りが悪化したため、材料購入先であるY社に支払い猶予を求めた。BはAの実質上の経営者であるが、AのYに対する一切の債務について連帯保証をし、且つB所有の不動産上に根抵当権を設定。そのさいBは保証料等は何ら受け取っていない。
 その後Bが破産。Xが管財人に選任。根抵当権設定されているBの不動産について任意競売が実施されたところ、XはYに対して根抵当権の設定は160条3項の無償行為に当たると主張。
 原審でY敗訴のためY上告。

【判 旨】:上告棄却
 「根抵当権等の担保の供与は、…破産者がその対価として経済的利益を受けない限り、無償行為に当たると解すべきであり、右に理は主たる債務者が同族会社であり、破産者がその実質的経営者でも妥当する」「無償行為として否認される根拠は、破産者の行為が対価を伴わないものであって破産債権者の利益を害する危険が特に顕著であるため、破産者及び受益者の主観を顧慮することなく、専ら行為の内用及び時期に着目して特殊な否認類型を認めたことにあるから、その無償性は専ら破産者について決すれば足り、受益者の立場で無償であるかどうかは問われない」「破産者の前記保証等の行為とこれにより利益を受けた債権者の出捐との間には事実上の関係があるに過ぎず、また、破産者が取得する事のあるべき求償権も当然には右行為の対価としての経済的利益に当たるとはいえない」


32 手形の買戻と否認の制限
【事案の概要】 6月28日、A支払停止。7月23日破産申立て、その後破産宣告、Xが管財人に就任。
 ところでAは、自己が取得したB振出の約束手形12通をY銀行に交付、手形割引の方法で融資を受けていた。しかし6月28日、@AはYより同手形11通を満期前の買戻し、手形をBに返還 AAはYより手形1通の遡求を受け、支払をなし手形を受け戻し、手形をBに返還。
 そこでXがYに対し、買戻し・受け戻しを否認し、買戻代金と遅延損害金の支払を請求。
一審: Xの請求認容。
原審: Xの請求棄却。手形を買い戻したAがそれを振出人に返還した場合、買戻しが否認されると、Yは振出人に対して権利を行使することができなくなる。@手形の買戻し→163条1項の類推適用、A手形受け戻し→163条1項直接適用により、否認は許されない。
【決定要旨】 破棄差戻し。
・ Xが否認する行為は手形割引に伴う消費貸借契約に基づく債務の弁済行為である。
・ 163条1項は、破産者から手形の支払を受けた者が、その支払がなければ前者に対する訴求権行使のための法定手続をなしえたであろうことを考慮する制度。「債務者の一人又は数人に対する手形場の権利」とは、前者に対する遡求権を指し、「手形の支払」とは約手振出人の支払を指す。本件のように振出人でない破産会社が支払・買戻をした場合、同条項を適用・類推適用する余地はない。
【解 説】 
・ 手形の満期が到来し、振出人が経済的に破綻しているときのジレンマ。所持人は、振出人等に対する手形の呈示による拒絶証書の作成を受けなければ裏書人に対する遡求権を失う。しかし呈示をして支払を受けても、後にそれが否認されれば、もはや拒絶証書の作成はできず遡求権行使の機会が失われる。→遡求権保全のためには支払を求めざるを得ないが、支払を受けても否認されれば遡求権を失うというジレンマがある。この解消が163条1項の目的。
・ 確かに本件のAは裏書人であり、Aの買戻が否認されると、手形がBに返還されているため、Yは手形の返還を受けられずBにも行けないうえ、Aに買戻金を返還しなければならない。
・ しかし、Yは、確かに否認されると権利行使はできなくなるが、そもそも買戻を請求しなくても遡求権を失うわけではなく、上述のジレンマには陥っていない。


33 対抗要件の否認
 管財人が不動産につき相手方に対し、否認権を行使して不動産移転登記抹消登記請求を提起した場合、160条〜162条によって原因行為たる契約自体を否認できないとしても対抗要件否認(164)の要件を満たす場合には、管財人からの主張がなくても裁判所は釈明権を行使して164条につき主張・立証させるよう努めなければならないか。
 164条の趣旨は、対抗要件の充足行為も、本来は、160条・162条によって否認の対象となり得べきであるが、原因行為に否認の理由がない限り、できるだけ対抗要件を具備させることとし、一定の要件を満たす場合にのみ、特にこれを否認し得ることとした点にある。
 (そして、原因行為の否認と対抗要件の否認とが同一訴訟物を理由付ける複数の請求原因という関係に立ち、また、管財人としては原因行為の否認が否定された時には予備的に対抗要件の否認について審判を求めていることが)ほとんど疑いを容れる余地がない。
 したがって裁判所としては、(原因行為を否認する場合に管財人からの主張がなくても)対抗要件の否認について主張・立証させるように努めた上で、この点についても判断すべきことが当然である。
 ※試験委員・笠井正俊先生の解説
 判例は、対抗要件否認(164)につき制限説に立つことを明らかにした。すなわち対抗要件具備行為も、財団にとって権利の移転と同じ価値を有するので、本来、否認の一般規定によって否認できるはずであるが、新たな権利移転ではなく、既に生じた権利移転を完成させる行為に過ぎないから、164条が厳格な要件を定めて、否認を制限したとする。
 制限説に立つと、「支払の停止等があった後」(164)の要件を満たさない場合、すなわち支払停止前または破産開始決定前の対抗要件具備行為について160条1項1号による否認の余地があるかという問題が残り、同条の要件を満たせば認められるとする肯定説と164条の場合に限られるとする否定説がある。
 これに対し創造説(原因行為が否認できない以上、対抗要件はその義務の履行であって財産の減少をもたらさないので、本来は否認できないはずであるが、特に164条がその要件を満たすような遅れた対抗要件具備行為を特に否認の対象とすることとしたとする説)からは、同条の要件を満たさない限り対抗要件の否認は認められないというのが当然の帰結となる。


NO34:停止条件付集合債権譲渡契約と否認権
【事案の概要】
AはYとの間で、AのYに対して負担する一切の債務の担保のため、Aの特定の第三債務者らに対する現在及び将来の売掛代金債権等をYに包括譲渡することとし、その債権の譲渡の発生時期は、Aにおいて、破産手続開始の申立がなされたとき、支払停止の状態に陥ったとき等の一定の事由が生じたとき、とする旨の契約を締結。
 その後Aが破産しXが管財人に選任。XはYに対して、本件債権譲渡契約に係る債権譲渡については162条1項に基づき、債権譲渡の通知については164条に基づき、否認権を行使し、Yが第三債務者から弁済として受領した金員の返還、未弁済の債権についてXに帰属することの確認を求めた。
 原審でY敗訴したため、Y上告。

【判 旨】:上告棄却
「160条1項の趣旨は、債務者に支払停止等があったとき以降の時期を債務者の財産的な危機時期とし、危機時機の到来後に行われた債務者による上記担保の供与等の行為をすべて否認の対象とすることにより、債権者間の平等および破産財団の充実を図ろうとするものである」
「支払停止等を停止条件とする債権譲渡契約はその契約締結自体は危機時期前に行われるものであるが、契約当事者はその契約に基づく債権譲渡の効力の発生を債務者の支払停止等の危機時期の到来にかからしめ、これを支払停止とすることにより、危機時期に至るまで債務者の責任財産に属していた債権を債務者の危機時期が到来するや直ちに当該債権者に帰属させることによって、これを責任財産から逸出させることをあらかじめ意図する」ものであって、係る契約は「破産法160条1項の実効性を失わせるものであって、その契約内容を実質的にみれば、上記契約に係る債権譲渡は、債務者に支払停止等の危機時機が到来した後に行われた債権譲渡と同視するべきものであり、上記規定に基づく否認権行使の対象となる」


35 執行行為の否認
【事案の概要】
Aの債権者Yは、Aに対して執行証書による貸金債権を有していた。
10月5日、Aが1回目の手形不渡り。
12月7日、Yが執行証書に基づき、Aが福岡市に対して有する請負代金債権の差押取立命令を取得、約1500万円を取得。
12月16日、A破産宣告、Xが破産管財人に就任。
XがYに対して否認権行使の訴えを提起。主位的にはYの行為は債務消滅に関する執行行為にあたる(165条、および旧72条2号故意否認)。予備的には、破産債権者を害することを知ってした執行行為にあたる(165条、および旧72条2号)と主張。
一審も原審も、否認権行使のためには、破産者の害意ある加功は要件ではないとしてXの請求認容。Y上告。
【判旨】 上告棄却。執行行為に基づく「債務の消滅に関する行為」の故意否認については、破産者の害意ある加功は必要でない。
【解 説】
・ 現行法は従来の故意否認・危機否認から、詐害行為否認(160条1項)・偏頗行為否認(162条1項)の区別になった。後者はさらに、担保の供与または債務の消滅に関する行為を除き、@時期を問わず詐害行為を対象にするもの(160条1項1号) A支払停止または開始申立て後の詐害行為を対象にするもの(同2号)に分かれる。
・ 現行法では、Aの詐害行為否認または偏頗行為否認につき、破産者の主観的要件が要求されていない→執行行為として行われる場合に、破産者の害意ある加功を要しない。


36 仮登記仮処分の否認
 不動産登記法上の仮登記仮処分命令を得てする仮登記は、仮登記権利者が単独で申請し、仮登記義務者は関与しないものであるが、これも164条の対抗要件具備行為の否認の対象となるか。(前提として本判例が引用する最判昭和40年3月9日によれば、「対抗要件充足行為は、破産者の行為またはこれと同視すべきものに限られる」とした。そこで本件仮登記仮処分が「破産者の行為…と同視すべきもの」に含まれるか。)
 仮登記は、それ自体で対抗要件を充足させるものではないが、本登記の際の順位を保全し、破産財団に対してもその効力を有するものであるから、仮登記も対抗要件を充足させる行為に準ずるものとして164条1項の対象となる。
 そして仮登記仮処分においても同様。なぜなら仮登記仮処分は、その効力において共同申請による仮登記と何ら異なるところはなく、否認権行使の対象とするにつき両者を区別して扱う合理的な理由はないこと、実際上も、仮登記仮処分命令は、仮登記義務者の処分意思が明確に認められる文書等が存するときに発令されるのが通例であることにかんがみると、仮登記仮処分命令に基づく仮登記も、破産者の行為があった場合と同視し、これに準じて否認することができるものと解するのが相当であるから。
 (因みに上記昭和40年判決では、破産者の行った債権譲渡についての債務者の承諾が否認の対象とならないとした。本件仮登記仮処分と債務者の承諾とで結論が異なることになるが、これにどう整合性をつけるかが問題として残る)


NO37:相殺と否認
【事案の概要】
 ZはY社の従業員だったが、Yを退職後に破産し、Xが管財人に選任。
Zは在職中、社内の住宅財形融資制度により低利且つ無担保で住宅資金を借り入れ、返済は給与から控除され、退職時は退職金で一括返済する約束だった。その約定どおりYは貸付金と退職金とを相殺処理。
 Zの破産管財人となったXが@Yの本件相殺による一括返済は賃金の直接・全額払いを定める労働基準法に違反する、A本件相殺は他の破産債権者を害するのでこれを否認する、としてYに一括払いを求めた。
 原審では本件相殺は否認の対象とならないとしてY勝訴したため、Xが上告。

【判 旨】:上告棄却
労働法上の争点は省略
「債権者の相殺権の行使は、債務者の破産宣告の前後を通じ、否認権行使の対象とはならないものと解すべきであるから、本件相殺におけるY社の相殺権の行使自体、否認権の対象とはならない」


38 否認の登記と転得者 ※大阪高裁判決
【事案の概要】
  破産者Aが、Bに対し本件建物を売却し、A→B所有権移転登記。しかし管財人Xが売買を否認、260条1項により否認の登記。
  しかしその後、B→Yへ売買、所有権移転登記がなされていた。
  そこでXはYに対し、所有権移転登記の抹消登記手続を請求。
  一審はXの請求認容。
【判旨】 Yの控訴を棄却。
  否認登記は、管財人を登記権利者、相手方を登記義務者とする暫定的な実質上の抹消登記であり、破産終結時において否認の効力が消滅して否認された登記を現状に回復する場合に抹消登記の回復登記によることを要しないよう、特殊の記入登記の形態をとる。すなわち、否認登記の記入により、登記簿上には相手方の所有名義が残存しているとはいえ、その実質において右所有名義は否定されており、爾後、相手方は登記義務者とはなり得ない。
【解 説】 否認権の行使によって破産者から受益者等に移転した財産権は当然に物権的に破産財団に復帰するが(167条1項)、その効力は破産財団との関係においてのみ相対的に生ずる。そこで否認の登記とは、各種登記(通常の移転登記や抹消登記)とは異なる登記が必要ではないかが問題となる。
特殊登記説(通説): 特別な登記が必要。
各種登記説: 通常の抹消登記でよい。否認の登記が残っていると、管財人が当該財産権を処分しようとしても、買受人が不安を抱き換価に支障を生ずる。
新法では、否認の登記がなされた目的物の任意売却等を原因とする移転登記の際に、登記官は、当該否認の登記を職権で抹消しなければならないと定め(260条2項)、換価が円滑に行われるよう配慮している。


39 弁済否認と連帯保証債務の復活
 債務者たる破産者が債権者に対し債務の弁済をした場合に、この弁済が破産管財人により否認され、その納付したものが破産財団に復帰したときは、貸金債権に付従していた連帯保証債務も復活するか。
 判例は、一旦消滅した連帯保証債務は当然復活すると解するのが相当であるとした。
 判例の当然復活説を前提とすると不都合な点が生起する。
 @例えば、債権者甲に弁済した破産者たる連帯債務者乙が連帯債務者丙に求償して丙が負担部分に応じて償還した後に、乙が破産手続開始決定を受けて弁済が否認された場合、当該連帯債務が復活すると、丙は乙に償還した上になお甲に対し全額弁済の責を負うことになり、苛酷かつ不合理である。これに対しては丙の償還部分が乙の財産に帰属する以上、否認の対象となるのは、破産財団に属する財産の価値が減少する限度、すなわち丙の償還部分を除いた部分と解すれば不都合性は回避できる。
 また、A物上保証の場合、破産者たる債務者の弁済によって担保権の登記が抹消された後に、当該不動産が第三者に譲渡されかつ登記された場合には、取引の安全の見地から担保権は復活しないと解すべきである。ただし、その場合、物上保証人は担保権の回復に代わる経済的利益を債権者に提供する義務を負うと解することで足りるであろう。

NO40:否認による価額償還
【事案の概要】
A社は破産宣告をうけXが管財人に選任。XはYがA所有のトラック1台を搬出しその所有権を失わせたので主位的に不法行為による損害賠償を請求する、仮にYがAに対する債権との相殺を意図してトラックの搬出をしたとしても予備的に破産法による否認権行使に基づく価額償還を求めた。
 原審では価額償還請求権の発生は肯定したものの、本件においてはその価額の立証がなされていないとしてX敗訴。そのためXが上告。

【判 旨】:破棄差戻し
「否認権行使の結果、元物の返還が不可能なためこれに代えてその価額を償還すべき場合には、その償還すべき金額は破産法167条の法意に照らし、否認権行使の時価を持って算出するべき」
「訴訟の経緯に照らすと、原審が本件価額償還請求権の発生を肯認しながら、Xに対し否認権行使時の時価の立証を促さないまま、その価額の立証がないとの理由で直ちにXの前記請求を排斥したことは著しく不相当な措置であるといわざるを得」ない。


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2009年10月03日

とうさん100選21−30

21 破産財団の範囲−名誉毀損による慰謝料請求権
 破産開始決定後、破産終結決定前に国賠法による慰謝料請求をした場合、破産者は国賠請求訴訟の原告適格があるか。また訴訟提起によって慰謝料の行使上の一身専属性が失われ、慰謝料請求権も破産財団を構成し、債権者による差押えが可能となるか。
 名誉侵害を理由とする慰謝料請求権は、これを訴求するだけで行使上の一身専属性を失うものではなく、当事者間において支払うべき具体的な金額が客観的に確定した時、又はそれ以前でも被害者が死亡した時に、一身専属性を失い差押え可能となるに過ぎない。
 したがって、被害者(破産者)に対してそれ以前に破産開始決定がなされた場合には、右請求権は破産財団に属せず、破産者自身がこれに関する訴訟の当事者適格を有する。また右請求権は差押え禁止財産として破産財団から除かれる(34V(2))。


NO22:損害保険代理店の保険料専用口座の預金債権
【事案の概要】
 損害保険会社XはAとの間で損害保険代理店委託契約を締結(契約内容は、AはXを代理し保険契約の締結・保険料の収受・保険領収書の発行などの事務を行うもの)。
AはY信用金庫C支店に「X火災海上保険(株)代理店A(株)B」名義の普通預金口座を開設。これはAがXのために保険契約者から収受した保険料のみを入金する目的で開設されたもので、本件預金口座の通帳及び届出印はAが保管。
Aは2度の不渡りを出すことが確実となり、XのD支社長に本件預金口座の通帳及び届出印を交付した。
ところがYは同日、YのAに対する債権と本件預金債権とを相殺。一方、XはYに対して本件預金の払い戻しを請求。
原審は保険料の帰属について、実質的経済的利益はXが有していることを理由に、本件保険料の所有権はXにあるとする特段の事情があるとして、X勝訴。これに対してYが上告。

【判 旨】:破棄自判
 「Yとの間で普通預金契約を締結し手本権預金口座を開設したのはA。本件口座名義である『X火災海上保険(株)代理店A(株)B』が預金者としてAではなくXを表示しているとは認められないし、XがAにYとの間での普通預金契約締結の代理権を授与していた事情は…伺われない」「通帳及び届出印はAが保管しており…本件預金口座の管理者は名実ともにAであるというべき」である。また「金銭については占有と所有とが結合しているため、金銭の所有権は常に金銭の占有者に帰属」するため、「Xの代理権であるAが…収受した保険料の所有権は一旦Aに帰属」する。したがって「本件預金債権はXにではなくAに帰属するというべきである」。「Aが本件預金債権をAの他の財産と明確に区分して管理していたり…本件預金の目的や使途についてAとXとの間の契約によって制限が設けられ、…Xに交付されるべき金銭を一時入金しておくための専用口座であるという事情があるからといって、これらが金融機関であるYに対する関係で本件預金債権の帰属者の認定を左右する事情になるわけではない」「本件預金債権はXに帰属するとは認められない」

【解 説】
1, 本判例は、従来の民法における預金者認定で取られてきた客観説(預金原資の出捐者とする見解)を改説したのかどうか評価が分かれている。アペンディクス18事件(H15/6/12)でも同様の事件が取り上げられ、そこでは名義人に預金債権が帰属するとされており、客観説を放棄したと考えられるからである。
2, 本件で直接触れられていないが、保険会社による取戻権の行使が可能かどうか検討の余地がある。
 解説ではこの点、取戻権の基礎となる権利の存否が問題となるとして、三つの見解を挙げる。 
a説:問屋破産が株式の買い入れに当たり前払い金を受け取って株式を取得した後、これを委託者に引き渡す前に破産した事例で、委託契約の実行により問屋が取得した目的物品を問屋の一般債権者の責任財産として期待すべきではないとして、委託者の取戻権を認めた→この法理を保険代理店にそのまま用いる
〈批判〉取戻権の基礎としての明確な実体的権利が存するか問題が残る
b説:取り戻し権の基礎は、保険会社が専用口座の預金債権の譲渡を求めうる債権的請求権であるとの見解
〈批判〉取戻権の基礎となる債権的請求権であるためには、破産管財人の支配権を否定して、自己への引渡しを求める内容のものでなければならないが、この見解がそれに耐えられるか疑問。
c説:保険料債権を対象として、保険会社を委託者及び受益者、代理店を受託者とする信託関係の設定が認められれば信託法16条により対象財産が受託者の責任財産から外れ、保険会社が取戻権を行使できるとの見解。
〈批判〉保険会社から代理店への財産権の移転があると言えるかどうかの問題が未解決


23 支払停止 危機否認の要件
【事案の概要】 支払停止があったか否か、あったとすればどの時点かが問題となった事例。Aは資金繰りが苦しい個人。かねがねYより借金、A所有の土地建物に抵当権を設定。Yに対し印鑑証明、委任状等を交付していたが、Yいまだこれを登記せず。
8月、A→Yに追加融資を打診も断られ、ますます苦しく。9月末、A知り合いの弁護士Bに債務整理の方法等について相談したい旨電話。それを知ったY、Bに電話し、Aが破産の申立てをするのかと問い合わせるも、「まだ相談の段階で未定」との返答。10月8日、AB面談、15日に破産の申立てをする旨打ち合わせ。10月14日、Y前記抵当権を仮登記。15日A破産申立て、29日破産宣告、X管財人に。
X→Yに否認権行使。主位的に本件仮登記の原因行為を否認(162条1項2号・162条1項参照)、予備的に本件仮登記を否認(164条1項)し、否認登記手続を求める。
  一審はYは倒産の時期につき確たる知識なしとしてXの請求棄却。原審は10月8日AB間で破産申立ての方針を決めた時点を支払停止と認定し請求認容。
【判旨】 破棄差戻し。支払停止とは、債務者が資力欠乏のため債務の支払いをすることができないと考えその旨を明示的又は黙示的に外部に表示する行為をいうものと解すべき。債務者が弁護士との間で破産申立ての方針を決めただけでは、特段の事情のない限り、いまだ内部的に支払停止の方針を決めたにとどまり、債務の支払をすることができない旨を外部に表示する行為をしたとすることはできないというべき。


24 総破産債権の消滅と否認権の行使
 故意否認(160条)該当行為があった後、約10年を経た後に破産開始決定がなされた場合、管財人は否認権行使できるか。すなわち故意否認の制度は詐害行為取消権(民424条)と同趣旨と解されるところ、否認権行使の相手方は、総債権者の詐害行為取消権が消滅(民426)していることを理由に否認権行使の効果を否定できるか。
 破産債権は届出、調査、確定などの手続を経て確定されるものであるから、相手方において個々の債権の不存在を主張して、否認権行使の効果を否定することは破産手続の性格と相容れない。
 160条は、民法424条と同趣旨のものであるが、否認権は破産者の全財産を総債権者の公平な満足に充てる観点から破産管財人が行使するものであるから、176条の規定(否認権行使の除斥期間)は160条の否認についても適用があり、総破産債権者につき詐害行為取消権の消滅時効が完成したとしても、本条の期間が経過しない限り、否認権は消滅しない。


NO25:給与支払機関から共済組合への振込と否認
【事案の概要】
 T事件 
Y1はAに対して貸付金債権を有していたが、Aは破産宣告を待たずに退職。Aの退職手当金全額が地方公務員等共済組合法115条2項に基づき、破産宣告前に上記貸付金債務の弁済として、Y1の銀行口座に払い込まれた。その当時Y1はAの自己破産申立てないし支払停止を知っていた。破産宣告後、Aの破産管財人Xは給与支払期間が行った払い込みを否認し、Y1に対し、相当額の支払いを訴求。
 U事件
Y2はBに対して貸付金債権を有していたが、Bは破産宣告を待たずに退職。Bの退職手当金全額のうち貸付債権の残額に相当する額が、国家公務員等共済組合法101条2項に基づき、破産宣告前に上記貸付金債務の弁済として、Y2の銀行口座に払い込まれた。その当時Y2はBの自己破産申立てないし支払停止を知っていた。破産宣告後、Bの破産管財人Xは給与支払期間が行った払い込みを否認し、Y2に対し、相当額の支払いを訴求。

【判 旨】
判決T:「地共法115条2項は組合員から貸付金等を確実に回収し、もって組合の財源を確保する目的で設けられた」「右支払が他の債権に対して優先する旨の規定を欠くこと、『組合員に代わって』組合に払い込まなければならないとしている同条項の文言に照らしてみれば、この払い込みは組合に対する組合員の債務の弁済を代行するものに外ならなず」「破産手続き上他の一般破産債権に優先して組合員に対する貸付金債権の弁済を受けうることを同条項が規定したものと解することはできない」
判決U:「また、退職者に対し退職手当が支払われたことにより、退職手当請求債権は消滅し、既に支払われた金員について…民事執行法152条2項の適用はないから…右退職手当相当の金員は破産財団を構成するというべきであり、破産者が右退職手当をもって特定の債権者に対し債務を弁済した後、破産宣告を受けた場合に、その金額が退職手当の4分の3の範囲内であっても、その弁済は否認の対象となりうると解するのが相当」


26 借入金による弁済と否認
【事案の概要】 
 4月1日、A証券、顧客Yに対し国債売戻代金債務5億円を負担。
 しかし実はAは3月31日、すでに9億円の債務超過。4月18日営業停止、5月30日免許取消、事実上倒産。7月12日破産宣告、X管財人に。
 →ところが、この間の4月12日、AはN証券業協会等より、計5億円の融資を受け、これをYに支払っていた。つまり、AとNらの間で、投資者保護のため必要な場合に限り、特別融資を受けることのできる契約を締結。使途は投資者への返済に限定され、実際、Aは銀行で小切手をNらより受取り、その場でYに対しこれを支払った。
  そこでXは、AY間の弁済当時、Aは債務超過にあり、Aは本件弁済が他の債権者を害することを知っていたとして、162条1項1号の否認を主張、Yに対して弁済金利息の支払い請求。一審も原審もXの請求棄却、X上告。
【判旨】 上告棄却。
・ 借入前と弁済後で、破産者の積極財産の減少も消極財産の増加もない。
・ この借入れは、特定の債務の弁済に充てることを約定したもので、この約定をしなければ借入れがそもそもできなかった。しかも、銀行で即座にYに対して弁済されていて、Aにおいて他の使途に流用できる可能性もなかった。→そもそも、(Yへの)特定の債務の弁済に充てる以外の使途であれば借り入れることができなかったもので、破産債権者の共同担保となるのであれば破産者に帰属し得なかった財産である。
・ とすれば、この弁済は破産債権者の共同担保を減損するものではなく、破産債権者を害するものでないから、160条1項1号の否認の対象とならない。


27 不動産の適価売却と否認
 破産開始決定前に、唯一の財産である不動産を適正価格で売却することは否認権の対象となるか。
 この点、費消・隠匿しやすい金銭にかえることは、特段の事情がない限り、原則的に破産債権者に対する詐害行為に該当するが、その代金の大部分を被担保債権の弁済に充てた場合には、右売却はその部分については詐害性を有しない。
 弁済に充てられた分を超える限度については否認権の対象となり得るが、本件抵当不動産は不可分であるから否認権行使の効果として、(売却代金の約8割を弁済に充てた本件の場合)本件土地全部について否認権を行使することはできない。
 (尚、現在では161条が新設された。本件を161条にあてはめて検討してみると、8割を弁済に充てた事実は同条1項2号の「破産者が…隠匿等の処分をする意思」に該当しないとして、結局、結論は同じになると思われる)


NO28:代物弁済と否認
【事案の概要】
 Y社はA社に対して売掛代金債権を有していた。Aが手形の不渡りを出したため、Y社従業員がA社事務所からYの製品や他社製品を搬出。その後YはAの破産申立。Y従業員が搬出した製品についてはAのYに対する債務の代物弁済として示談が成立。Aの破産管財人Xは当該代物弁済を否認する旨主張。
 原審はYの動産先取特権が認められる部分については否認は否定したが、残部については否認を肯定。Xが上告。

【判 旨】:一部破棄・一部自判
「AがYに代物弁済に供した行為が、破産債権者を害する行為にあたらない旨の原判決の判断は、売買当時に比し代物弁済当時において当該物件の価格が増加したことは認められない旨の原判決の確定した事実関係の下においては正当」「破産債権者を害する行為とは、破産債権者の共同担保を減損させる行為であるところ、もともと前示物権は破産債権者の共同担保ではなかったものであり、右代物弁済によりYの債務は消滅に帰したからである」


29 動産売買先取特権の目的物を、転売先から取りもどしてする代物弁済と否認
【事案の概要】 Aは紳士服等卸業者。
  7月27日、Y→A、スーツ106着売買、弁済期9月の約定。その後A→Bに右スーツ50着転売。
  7月31日、A1回目の手形の不渡り。
  8月3日、ABY間で、AB間の右売買を解除、A→Yにそのスーツ50着を代物弁済として譲渡する旨合意、実行。これ以外にもA→Yにスーツ36着を代物弁済。
  8月24日A破産申立て、9月4日破産宣告、X管財人に。
  X、Yに対し、上記の各代物弁済を否認、スーツ売買代金相当の価額償還の訴え。
 一審: 36着→Yの動産売買先取特権の目的物として否認成立を否定。
    50着→AB間の合意解除は、実質的には義務がないのにYに対して担保供与となるとして、否認を認めた。
 原審: 50着→AB間の合意解除は、Aの一般財産を減少させる行為でない、動産先取特権の目的物であるとして、否認を否定し請求棄却。
【判旨】 破棄差戻し。
  50着→Aが転売契約を合意解除して取り戻した行為は、Yに対する関係では、法的に不可能であった担保権の行使を可能にすると言う意味において、実質的には新たな担保権の設定と同視しうる。そして、本件代物弁済は、50着をYに返還する意図の下に、転売契約の合意解除による50着の取戻しと一体として行われたものであり、支払停止後に義務無くして設定された担保権の目的物を、被担保債権の代物弁済に供する行為に等しいというべき。
  なおYは、Aの転売により転売代金債権につき物上代位権を取得している。しかし物上代位権の行使には制約があり、常に他の債権者に優先して行使しうるとはいえない。しかも、本件代物弁済の時点で弁済期も到来しておらず、Yが物上代位権を行使する余地もなかった。→代物弁済が他の債権者を害するかどうかの判断に際し、物上代位権の存在は問題とならない。


30 借入れのための担保権の設定と否認
 経営悪化した状態で破産者が追加融資を受けると共に新たに担保の設定をした場合に、否認権の対象となるか。
 資産状態の悪化した債務者が、既存債務のため特定の債権者に担保を提供する行為は、他の一般債権者の利益を害することになるので、後に債務者が破産開始決定を受けた場合、162条に基づく否認権行使の対象とされるのは当然であるが、右債務者があくまで事業の継続を図り、これを前提として緊急の支払資金を得べく他から借入れをなし、これに担保を提供する行為は借入額と担保物件の価格との間に合理的均衡が保たれている限り、一般債権者の利益を害するものではなく、したがって前記法条に基づく否認権行使の対象とはならないものと解せられる。
 (尚、現在では162条1項柱書括弧書きで、緊急融資に担保が設定された場合のいわゆる同時交換行為は偏波行為の否認の対象から除外することが明文化されている)
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2009年10月02日

とうさん100選11−20

11 保全処分の対象 退職前の退職金請求権 ※福岡高裁判決
【事案の概要】 AはY市職員。Y市を退職し、自己破産申立て。Y市は退職金558万円の支給決定。破産裁判所は破産宣告前の保全処分として、Y市に対し、退職金全額の支払いを禁じる仮差押決定送達。しかしY市は、Aが借金していたY市職員共済組合等に対し317万円を支払い、さらに税を控除して、212万円を管財人Xに支払い。
  そこで管財人Xは、Y市が、保全処分にもかかわらず、退職金を共済組合等に払ったのは無効として、退職金支払いを請求。一審はXの請求認容。
【決定要旨】 二審は原判決取消・請求棄却でX敗訴。
退職金は、4分の3が差押禁止財産(民執152条2項)。差押え禁止財産は、破産者の自由財産⇒破産財団に組み込まれるのは、4分の1が原則。
たしかに、旧民訴618条2項但書によれば、退職金も事情によっては裁判所の許可を得て2分の1まで差押え可能⇒2分の1まで破産財団に組込み可能。しかし、Xからは4分の1を超える部分について、破産財団に帰属せしめる事由のあることにつき、主張立証がない⇒破産財団への組込みは原則通り4分の1。本件では558万円のうち、4分の1を超える212万円がすでに破産財団に組み込まれており、それ以上退職金から破産財団に組み込む部分は存在しない。
※ 要は、差押え禁止財産は原則として財産保全処分の対象とならないということ。


12 弁済禁止保全処分の効力−失権約款
<事実の概要>
 売主X・買主A間の建設用機械の所有権留保売買契約を締結。@代金弁済まで所有権留保し、その間Aに本件機械を無償貸与する旨、および、A手形の不渡りまたは倒産手続開始の申立て原因となる事実が発生したときは、Xは無催告で契約を解除できる旨、B代金支払方法は毎月手形を振出して行う旨、が契約内容。
 Aは代金の約3分の2を支払った段階で会社更生手続申立て。裁判所が更生法28条に基づく弁済禁止の保全処分を命じた。そのため手形が不渡となり、Xは特約により契約を解除し、管財人Yに対し、更正法64条に基づく本件機械の引渡請求提起。
 1審・原審とも原告敗訴。原告上告。
【判旨】
 上告棄却。
 通常は債務不履行によって所有権留保売買契約を解除し、目的物を返還請求することはできる。
 しかし更生法に基づく保全禁止の仮処分が命じられた時は、これにより会社はその債務を弁済してはならないとの拘束を受けるのであるから、その後に会社の負担する契約上の債務につき弁済期が到来しても、債権者は、会社の履行遅滞を理由として契約を解除することはできないものと解するのが相当。
 また債務者に更生手続開始の申立の原因となるべき事実が生じたことを売買契約解除の事由とする旨の特約は、債権者、株主その他の利害関係人の利害を調整しつつ窮境にある株式会社の事業の維持更正を図ろうとする会社更生手続の趣旨、目的(1条)を害するものであって認められない。


NO13:破産手続開始決定に対する株主の即時抗告申立権
【事案の概要】
 株主2人の株式会社の破産宣告がなされた際、一人の株主Xが即時抗告を申し立てた。
 抗告理由は@株主は破産宣告により地位を侵害される以上、重大な利害関係を有する。よって不服申し立て出来ないのは法感情にそぐわない、A会社の破産宣告により、株主は株主権を行使できなくなるとの重大な権利制限を受けるから、即時抗告権が認められるべき、というものであった。また、Xの株主権を喪失させる目的で破産申立てがなされた、とも主張。

【判 旨】:抗告却下(確定)
 「破産法は“破産手続等に関する裁判について利害関係を有する者”に即時抗告権をみとめている(9条)から」「破産宣告に対してはこれによって法律上の利益が直ちに害される者が利害関係人として即時抗告の申立てをなし得る」。「株主は会社の破産終結による会社の法人格の消滅に伴いその地位を喪失することになるが」「直ちに株主権が消滅したり、自益権や共益権に変更が生ずる事になるものではない」。「そうすると株主は…利害関係人にはあたらない」


14 破産手続開始決定に対する即時抗告期間 ※4版の新掲載判例
【事案の概要】 債権者Aが、破産者Xの破産を申立て。5月15日に破産宣告、同日Xに送達。同月25日にX即時抗告。同月29日に破産宣告決定が官報に掲載・公告。
  争点は、即時抗告期間。通常は破産13条で民訴準用→民訴332条で裁判の告知を受けた日から1週間。しかし公告があると、破産9条後段で公告の日から2週間。送達と公告の両方がなされた場合、いずれを基準とするかが問題となった。
【決定要旨】 最高裁は「公告説」をとることを明確にした。「…多数の利害関係人について集団的処理が要請される破産法上の手続においては不服申立て期間も画一的に定まる方が望ましいこと等に照らすと、上記決定の公告のあった日から起算して2週間であると解するのが相当である」。
【解 説】 改正前は裁判はすべて送達とされていたが(旧法111条)、改正後は送達すべき場合が個別に規定され、それ以外は通知で足りることになった。⇒今後送達と公告が競合する場面はあまり多くないかも(免責許可決定とか)。


15 有限会社の破産と火災保険契約約款の免責条項の「取締役」
 火災保険契約において免責条項の中に「取締役…の故意、重過失、法令違反」の場合が明記されていた場合、破産手続開始決定後の取締役は同条項の「取締役」に含まれるか。取締役は破産によって地位を失うのではないか?失わないとしても管理処分権を奪われた取締役は同条項の「取締役」に含まれるのか?が問題。
 判旨。有限会社の破産手続開始決定によっては取締役の地位は当然には失われない(最判昭和43年3月15日は、破産手続開始決定と共に同時破産廃止の決定を受けた場合に取締役が当然に清算人になるものではないことを判示したもので本件とは事案を異にする)。
 また本件免責条項は、免責の対象となる保険事故の招致をした者の範囲を明確かつ画一的に定めていること等に鑑みると、本件「取締役」の意義については、文字どおり、取締役の地位にある者をいうと解すべきである。
 (判例は破産手続開始決定によっては取締役の地位を失わないとする非終任説に立つことを明らかにした。よって管財人の管理処分権に含まれない組織法上の行為、例えば総会の招集や会社設立無効の訴えの応訴などは、当然に取締役の権限に含まれるとした。)


NO16:破産管財人の第三者性(1)
【事案の概要】
 破産管財人Xが、破産者から土地を借りて建物を建てていたが対抗要件を備えていなかったYに対して、建物収去土地明渡請求訴訟を提起した。原審で敗訴したYが上告。

【判 旨】:上告棄却
 「破産管財人は…破産財団の管理機関であるから、破産宣告前破産者の設定した土地の賃借権に関しては、建物保護法1条の第三者に当たる者と解すべきである。」「Yらは…土地賃借権の対抗要件たる登記手続を経由していないのであるから、Yらは破産管財人たるXに対し右賃借権を対抗できないものというべきである」


17 破産管財人の第三者性(2) 民法467条2項の第三者
【事案の概要】 10月15日、A社に破産宣告、Xが破産管財人に就任。
Aは、破産申立て前にYらに対し売買代金債権を取得、10月4日、Zにこれら各債権を譲渡。10月6日、AからYに譲渡通知書を簡易書留で送付。
  管財人Xは、Zに対し、この債権譲渡は問題がある旨通知したうえ、Yらに対し代金支払い請求。Zは債権が自己に属する旨主張して、独立当事者参加。
  控訴審は、管財人Xは差押え債権者と同一の地位に立ち、民法467条2項の第三者に該当するので、Zは破産宣告前に対抗要件を具備しないとXに対抗できないとした。Zの主張する通知には「確定日付」等が認められない。
  Zは、XとZは二重譲渡に準じた関係にないとして上告。
【判旨】 Zの上告棄却。「指名債権の譲渡を受けた者は、譲渡人が破産宣告を受けた場合には、破産宣告前に右譲渡について民法467条2項所定の対抗要件を具備しない限り、右債権の譲受をもって破産管財人に対抗しえないものと解すべきである。」


18 破産管財人の第三者性(3)破産管財人に対する融通手形の抗弁
 手形の振出人は融通手形の抗弁でもって破産管財人に対抗できるか。
 判旨
本件手形は運転資金を融通する目的で振り出されたものであり、なんら破産者との間に対価関係があって振り出されたものではないから、振出人は融通手形の抗弁を管財人に対抗できる。
 (管財人の第三者性について、通謀虚偽表示(民法94条2項)においては第三者性を認め、本問では認めなかった。この整合性につき、管財人は破産者の承継人という地位と差押権者としての地位を併有することから説明する説や手形法17条プロパーの問題として説明する説があるが割愛。)


NO19:破産会社に対する会社不成立確認訴訟の被告適格
【事案の概要】
 合資会社Aが株式会社Yに組織変更した。その後Yは破産宣告を受けた。
 ところが組織変更の際、法定の広告手続などを怠ったとしてXらが右組織変更は無効であるとして、Yに対して取締役を代表し不成立確認訴訟を提起。原審でYの不成立が確認されたため、Yが上告(Yの上告理由として本件の訴えはYの破産財団に直接影響があるので取締役ではなく破産管財人を相手方とするべきである、とした)。

【判 旨】:上告棄却
 「法定の広告手続を経ないときは…組織変更は全く無効」「Yの成立が否定されるか否かは破産手続の遂行には影響がない」「破産管財人は破産財団の管理処分につき権限を有するに過ぎない」「Yの不成立確認を求める本訴のごとき会社の人格に関する訴えはもとより、破産財団に関する訴えにあらざることが明白」なので「破産管財人を相手方として提起するものにあらず」「法定代理人たる取締役により代表されるY会社を相手方とするべき」


20 責任追及等の訴え ※東京地裁決定。4版新判例
【事案の概要】 KはA社の株主。Kは、A社取締役のB〜E、総会屋Fに対し、利益供与を理由として株主代表訴訟。その後A社に破産手続開始、Xが管財人。
Xは原告Kの地位の受継を申し立て。Bらは、会社の破産により、株主は当事者適格を失い、訴訟は当然終了するとして、異議申し立て。
【決定要旨】 受継申立て認容。
株主代表訴訟は、株主が会社に代位して取締役に対する損害賠償請求権を行使するもので、債権者代位訴訟とその性質を同じくする。

債権者代位訴訟において債務者が破産した場合、代位債権者は代位訴訟の当事者適格を喪失する。その場合破産管財人は、債権者代位訴訟の訴訟物の処分権者であり、当該訴訟を継続させるかどうかの判断は、破産管財人の判断に委ねるのが相当⇒民訴125条1項(削除済)、破産45条1項準用により中断し、破産管財人において受継できる。

右に述べたところは、債権者代位訴訟とその性質を同じくする株主代表訴訟にも当てはまる。会社が破産した場合、損害賠償請求権は破産財団に属する権利であるから、会社の破産によって訴訟は中断し、管財人においてこれを受継できると解すべき。
なお傍論で、管財人は受継を拒絶し、別訴訟を提起することもできるとした。
【解 説】 手続開始後、株主に代表訴訟の追行権限があるかどうかの対立。
否定説=通説・本判例。
@ 役員に対する損害賠償請求権は会社の財産であり、管理処分権は管財人に属する。
 A 株主代表訴訟は、役員と会社経営陣との人的関係に由来する提訴懈怠可能性を懸念したものであるが、管財人は利害関係人に対して善管注意義務を負うし、裁判所の監督に服するから(75条)、提訴懈怠の懸念は生じない。
肯定説=有力説。
@ 株主には会社とは独立に代表訴訟を提起する固有の権限があり、破産手続開始後も当該権限は失われない。
A 善管注意義務では十分でない。従前の取締役が管財人に就任する場合(会社更生67条3項参照)もありうる。
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