2009年10月06日

とうさん100選51−60

51 手形の譲渡担保権者の地位
 破産者から手形債権につき譲渡担保の設定を受けた債権者が、回収した手形金を破産手続開始決定後の遅延損害金に充当することは許されるか(@事件)。また更生事件において更生債権者は譲渡担保手形を更生計画によらないで私的に実行し、自由に取り立てることができるか(A事件)。
 @事件について。いわゆる商業担保手形貸付の法律関係は譲渡担保権である。よって破産債権者は別除権者として破産手続によらないで手形金を取り立て弁済に充当することができる。
 そして右譲渡担保権で担保される債権の範囲については明文上制限がなく、本件契約により生ずる一切の債権に及ぶことを推認できる。
 そうであれば右譲渡担保権の担保する債権は、その遅延損害金にも及ぶ。
 A事件について。更生手続においては、更生債権として取り扱われる場合には、更生手続開始後において更生計画によらないで自由に取り立てることができるのに対し、更生担保権(更生法2条11項)として取り扱われると更生手続に服さなければならず、譲渡担保権の実行は許されない(更生法47T、50T)。
 そして譲渡担保手形は、いわば隠れた質入裏書というべきものであり、少なくとも当事者間においては右手形は依然として更生会社の財産とみることができる。


NO52:手形上の商事留置権の破産手続開始決定後の留置的効力
【事案の概要】
 A社はY銀行に手形の割引を申し込み、手形をY銀行に預けた。その後Aは破産宣告をうけ、Xが管財人に選任。XはYに対して手形の返還を請求。YはAに対する貸金債権を被担保債権とする商事留置権を主張し、手形返還を拒絶し、且つ手形金を受け取った上で被担保債権の弁済に充当。
 そこでXは不法行為が成立するとして手他が金相当額の損害賠償を求める訴えを提起。
原審でXの請求認容→Y上告。

【判 旨】:破棄自判・上告棄却
@手形に関する商事留置権は、破産法66条により破産手続開始決定後は特別の先取特権となるが、それに伴い留置権能が消滅するか否か
「手形に関する商事留置権を有する者は、破産宣告後においても、右手形を留置する権能を有し、管財人からの返還請求を拒むことが出来る」
「けだし、破産法66条の“これを先取特権とす”との文言は、当然には商事留置権者の有していた留置権能を消滅させる意味とは解されず、…破産法66条が商事留置権を特別の先取特権として優先弁済権を付与した趣旨に照らせば、…破産管財人に対する関係においては、商事留置権者が適法に有していた手形に対する留置権能を破産宣告によって消滅させる…ことを法が予定しているとは考えられない」
A取り立てた金員を銀行が弁済に充当できるか
「銀行取引約款4条4項の定めは抽象的包括的であって…右条項を根拠として…処分できるということはできない」
「しかし、期日未到来の手形の換価方法は、民事執行法によれば原則として執行官が手形交換により取り立てるものであるところ、銀行による取立ても手形交換によってされることが予定…取立てをする者の裁量等の介在する余地のない適正妥当な方法によるものである点に変わりない…銀行が右のような手形について適法な占有権原を有し、かつ特別の先取特権に基づく優先弁済権を有する場合には、銀行が自ら取り立てて弁済に充当しうるとの趣旨の約定をすることには合理性」がある。
よって、本件事実関係の元では銀行の管財人に対する不法行為は成立しない。


53  破産により特別先取特権とされる商事留置権と他の担保権との優劣 
【事案の概要】
  XがA所有の土地に根抵当権設定。その後AはYとの間で、本件土地上に建物建築請負契約。Y着工し、建物ほぼ完成。Aに破産宣告。
  Xが根抵当権に基づき、本件土地の競売を申し立て。しかし執行裁判所はYの本件土地に対する商事留置権を認め、土地評価額から商事留置権を控除すると剰余が生じないとして、競売手続を取消し。そこでXは取消決定に対し執行抗告。
【決定要旨】 原決定取消。
  確かにYは、本件土地にも商法521条の商事留置権を取得した。しかしAの破産宣告により、66条1項によって、特別の先取特権とみなされることとなる。
  破産宣告後に商事留置権者が当該物件を留置していなければならない合理的理由はないから、原則として破産宣告により商事留置権者の目的物に対する留置権能・使用収益権能は失われる。
  Yの特別先取特権とXの根抵当権の優劣は、物件相互の優劣関係を律する対抗関係として処理すべき→特別の先取特権に転化する前の商事留置権が成立した時と、抵当権設定登記経由時との先後によって決すべき。
【解 説】 商法521条の「物」には不動産は含まれないとする有力説もある。本件は含まれるとした裁判例のひとつ。


54 動産売買の先取特権による物上代位と買主の破産
 動産売買先取特権を有する売主が、破産者たる債務者から当該目的物を譲り受けた第三者に対して物上代位権(民304T)を行使するためには、売主自らが他の債権者よりも先に差押えをしなければならないか。同条が「払渡し又は引渡しの前に差押え」を要求している趣旨が問題。
 この点、上記の趣旨は特定性維持または優先権保全という趣旨に加え、第三者を過誤払いの危険から保護するという趣旨も含む。
 よって他の債権者よりも先に差押えをする必要はない。
 なお最判平成17年2月22日は、抵当権と異なり公示方法の存在しない動産売買の先取特権について第三者を保護する趣旨を含むので、物上代位の目的債権が譲渡され対抗要件が具備された後は、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできないと判示した。


NO55:破産財団から放棄された財産を目的とする別除権の放棄の意思表示をする相手方
【事案の概要】
 A社について破産宣告がなされ、Xが管財人に選任。YはAに破産債権を有し、それを被担保債権としてA所有の甲不動産に第二順位の根抵当権の設定。
甲不動産第一順位の根抵当権者の申出に基づき甲につき競売開始決定。Xは甲不動産を破産財団から放棄することとし、Yを含む別除権者に“甲を放棄すること・別除権者が破産配当に加わるためには別除権を放棄する必要があること”を通知した。
その後Xは最後配当に着手したが、配当表にはYは入っていなかった。
一方、YはA社の破産宣告当時の取締役であるBに対し、甲を目的とする別除権を放棄する意思表示をした。
以上の事実関係の下、Yが自分も最後配当に加えるべきだ、と主張し、配当表に対する異議申し立てをした。
 原原審では異議申し立てを却下。
 原審ではこれを取り消した。Xが許可抗告を申し立て。

【判 旨】:異議申し立て却下。
「破産財団から放棄された財産を目的とする別除権につき、別除権者がその放棄の意思表示をすべき相手方は、破産者が株式会社である場合も含め、破産者である。また、株式会社が破産宣告を受けて解散した場合、破産宣告当時の取締役は当然に清算人になるのではなく、管理処分権を失うと解すべきであり、」「したがって別除権放棄の意思表示を受領し、その抹消登記をすることなどの管理処分権は、清算人によるべきである」
「そうすると、破産者が株式会社である場合に破産財団から放棄された財産を目的とする別除権につき、別除権者が旧取締役に対してした別除権放棄の意思表示は、これを有効と見るべき特段の事情が存しない限り無効を解するのが相当」


56 ファイナンス・リースと担保権消滅請求手続 ※4版新規
【事案の概要】
 Yリース会社→X会社へ、本件動産につきフルペイアウト方式(★)によるファイナンス・リース契約を締結。X、これに基づき本件動産の引渡しを受ける。本件リース契約には、Xにつき仮差押、破産・会社更生の申立て等があったときは、Yは催告なしに契約解除・損害賠償請求として残リース料の請求ができる旨の特約有り。
 11月6日、別の債権者がXの不動産を差押え。
12月5日、X民事再生手続開始の申立て。
そこで12月24日、YはXに対し本件リース契約解除の意思表示(残リース料3000万円)。
  翌年1月12日、Xに再生手続開始決定。
  そこでXは、Yがリース契約に基づき本件動産につき所有権を留保し、担保権を有することを前提として、民再148条1項に基づき、Yを相手方として、本件動産の価額に相当する金銭(82万円)を納付して、本件動産上に存する担保権を消滅することにつき許可の申立て。
 問題点: @リース契約が担保権消滅許可の対象となるか。
A民事再生申立てを解除条件とするような特約の有効性。
【決定要旨】 Xの申立てを棄却。
  フルペイアウト方式によるリース契約の物件引渡しを受けたユーザーにつき再生手続開始決定があると、未払のリース料債権はその全額が再生債権となり、リース会社はリース物件につきユーザーが取得した利用権について、その再生債権を被担保債権とする担保権を有する。
  しかし本件では、再生手続開始前に、リース契約が特約により有効に解除され(A)、これによりXの利用権は消滅→YはXの利用権という制限のない、完全な所有権を取得した。
  よって、再生手続開始当時、本件物件はすでにXの財産ではなく、民再148条1項の担保権消滅許可の申立てをなしうる場合ではない。
  なお本件解除留保特約の有効性(A)→ 最高裁判例は倒産手続・会社更生手続の事案で、「更生申立てがあったら売買契約を解除できる」という特約を無効としている。
しかし、会社更生と民事再生では手続が以下のように異なる:
会社更生: 担保権者も手続に全面的に服すべきものとされ、担保権実行は禁止。
民事再生: 担保権は手続に取り込まれず、別除権として手続によらず行使可能。
よって、特約の効力につき両手続を同一に解することはできず、民再では有効。
【解 説】 問題点Aが有効とされると、実際には問題点@のリース契約が担保権消滅許可の対象となるか、という問題はあまり出てこなくなる。本決定は原則としてリース取引も担保権消滅許可の対象になることを前提としているようである。
  ★フルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約: 設備投資をする際、ユーザーが直接購入するのではなく、リース会社が購入して、これをユーザーに賃貸する形式を取る契約。リース料という形で分割的に購入代金を全額回収する。税務上のメリットから普及。


57 相殺の可否(1)−手続開始後の停止条件成就
 67条2項は破産債権者が破産債権を自働債権とし、停止条件付きや期限未到来の債権を受動債権として相殺することは、破産手続開始決定後、条件不成就の機会や期限未到来の利益を放棄して直ちにする場合は適法であると規定している。
 では破産債権者が破産手続開始決定後直ちに相殺せず、条件成就や期限到来を待ってする相殺も許されるか?(71条1項1号の相殺禁止に触れないか)
 同条項の趣旨は、破産債権者がする相殺の担保的機能に対して有する期待を保護しようとする点にあり、また相殺権の行使に何ら限定も加えられていない。そして破産手続においては、相殺権の行使時期についての制限が設けられていない。
 したがって条件成就後や期限到来後にする相殺も相殺権の濫用と認められる場合など特段の事情がない限り原則として有効であり、71条1項1号とは抵触しない。
 (民事再生法93条、会社更生法49条、会社法517条にも類似の規定があるが、67条2項に該当する条文はない。本判例のロジックによれば、民事再生・会社更生・特別清算の場合には上記事例で相殺は否定されることになるだろう)


NO58:相殺の可否
【事案の概要】
AはY信用金庫との間で、信用金庫取引約定に基づき、は取引先から取得した手形について、Y信用金庫との間で取立委任裏書きをなし、必要な都度、手形割引を受ける等していた。
Aは取引先の倒産により支払い停止、破産宣告を受けた。Xが管財人に選任。
Yは12通の手形について取立て委任を受けていたが、Aの支払停止後これを知りつつ破産宣告前に2通(甲手形)、破産宣告後に10通(乙手形)を取り立てていた。XはYに対して、甲手形について取り立て金の引渡し、乙手形について手形金相当額の不当利得返還請求。
Yは、取引約定に基づきAに対して取得した手形の買い戻し請求権とAのYに対する上記手形取立て金引渡し請求権及び不当利得返還請求権とを対当額で相殺すると主張。
原審はX請求認容。Yが上告。

【判 旨】:一部破棄自判・一部上告棄却。
「破産債権者が、支払い停止および破産申立てのあることを知る前に、破産者との間で“破産者が債務の履行をしなかったときには破産債権者が占有する破産者の手形等を取り立てて又は処分して、その取得金を債務の弁済に充当する事が出来る旨”の条項を含む取立て約定を締結の上、支払いの停止又は破産の申立てのあることを知った後、破産宣告前に右手形を取り立てた場合には、破産債権者が破産者に対して負担した取り立て金引渡し債務は、71条2項2号にいう“前に生じたる原因”に基づき負担したものに当たる」
「けだし、債務者が債権者に対して同種の債権を有する場合には、対立する両債権は相殺ができることにより、互いに担保的機能を持ち、当事者双方はこれを信頼して取引関係を持続するのであるが、その一方が破産宣告を受けた場合にも無制限に相殺を認めるときは、債権者間の公平・平等な満足を目的とする破産制度の趣旨が没却されることになるので、同号は、本文において破産債権者が支払いの停止又は破産の申立てのあることを知って破産者に対して債務を負担した場合に、相殺を禁止すると共に、但し書きに置いて相殺の担保的機能を期待して行われる取引の安全を保護する必要がある場合に相殺を禁止しないこととしているものと解される」
「破産債権者が前記のような取引約定のもとに破産者から個々の手形について取立て委任を受けている場合、…相殺に供することが出来るという破産債権者の期待は、同号但し書きの趣旨に照らし、保護に値する」


59 相殺の可否(3) 手形買戻代金債権と「前に生じたる原因」
【事案の概要】
 2月22日、Y銀行、手形取引契約に基づく手形割引により、A会社に15万円貸付。
 3月2日、A会社支払停止。
 11月6日、A会社破産宣告、X管財人就任。
 Xは、Y銀行に対し、Aが15万円の定期預金債権を有すると主張。
 Y銀行の主張→手形割引契約により、債務者の支払停止によって貸付金の弁済期が到来したとみなされる。そこで4月8日に、Aに対して貸付金を自働債権、定期預金を受動債権として相殺した。
【判旨】 Xの上告棄却。
  割引依頼人の支払停止を理由として銀行が取得した手形買戻代金債権は、支払停止後に取得した債権ではあるが、その基礎は手形を割り引いたときにあるのであって、「支払の停止を知りたる時より前に生じた原因」(現72条2項2号)にあたり、相殺禁止にあたらない。


60 相殺禁止規定に違反した相殺を有効とする合意
 破産債権者のなした相殺が71条1項3号で相殺禁止に触れるものであった場合、この相殺を有効とする破産管財人と破産債権者の合意は有効か。
 本件では破産債権者が有する別除権を放棄する代わりに管財人が相殺禁止を主張しないとの合意があったようである。
 最高裁は次のように判示。破産債権者が支払の停止を知ったのちに破産者に対して負担した債務を受動債権としてする相殺は、破産法上原則として禁止されており、かつ、この相殺禁止の定めは債権者間の実質的平等を図ることを目的とする強行規定と解すべきであるから、その効力を排除するような当事者間の合意は、たとえそれが破産管財人と破産債権者との間でされたとしても、特段の事情がない限り無効であると解するのが相当である。


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2009年10月05日

とうさん100選41−50

41 否認の効果が及ぶ範囲 ※平成17年最高裁判決
【事案の概要】
  Aはゴルフ場経営会社で、Bの100%子会社。BのC銀行に対する債務を担保するため、A所有の各不動産(土地294筆など)を担保に根抵当権設定。これによりAは債務超過に。AもCも、これによりAの債権者が完全な弁済を受けられなくなることにつき悪意。
  Aのゴルフクラブ会員Dらが、民法424条の詐害行為取消を主張し、Cに対し登記の抹消を求める訴え。
  その後Aにつき更生手続開始決定、Xが管財人となり、右訴訟を受継。会社更生法の否認権を行使して、各不動産の全体について否認登記手続を請求。
  一審: 否認権行使の範囲は、債務超過部分に相当する部分にとどまるとして、一部の土地についてしか認めなかった。
原審: Xの否認権行使を認め、各不動産全体に及ぶとした。
【判旨】 Yの上告棄却。
・ 更生手続開始により裁判所より選任された管財人による否認権の行使は、更生債権者等に対する弁済原資を確保し、更生会社の事業の維持更生を図る目的の下、その職責場行使するもの。民法424条で一般の債権者が、個別的に、自らの債権確保のために行使する詐害行為取消権とは異なり、債権額の限界は存在しない。
・ 更生債権も、更生会社に属する財産の価額も、更生法所定の手続により確定すべきもの。管財人の否認権の行使の時点ではいずれも確定しているわけではないことに照らせば、目的物が複数で可分であったとしても、そのすべてに否認の効果が及ぶと解するのが相当。


42 破産債権に対する自由財産からの弁済と不当利得の成否
 地方公務員等共済組合法115条2項所定の方法により、給与支払機関であるB事務組合が、破産者の退職金のうち4分の1を破産財団に交付し、残額(すなわち破産者の自由財産)から一部を共済組合に対する貸付金の弁済として交付した場合、破産者は貸付金の弁済として交付された金額を不当利得として返還請求できるか。
 破産法は破産財団を破産手続開始決定時の財産に固定する(34T)とともに、破産債権者は破産手続によらなければその破産債権を行使することができない(100)と規定し、破産者の経済的更生と生活保障を図っていることからすると、破産者の自由財産に対する強制執行はできないと解されるが、破産者がその自由な判断により自由財産の中から破産債権に対する任意の弁済をすることは妨げられないと解するのが相当である。
 もっとも自由財産は本来破産者の経済的更生と生活保障のために用いられるものであり、破産者は破産手続中に自由財産から破産債権に対する弁済を強制されるものではないことからすると、破産者がした弁済が任意の弁済に当たるか否かは厳格に解すべきであり、少しでも強制的な要素を伴う場合には任意の弁済に当たるということはできない。
 本件では任意性を肯定し得る事情は窺われないので、破産者による任意の弁済であるということはできない。
 (自由財産から任意の弁済ができるか?という点につきこれを認めるのが判例・通説である。この積極説に対して、消極説からは、これを認めると破産債権者からの圧力が危惧されると批判されるが、判例のように任意性の要件を厳格に認定すれば良い)


NO43:数人の全部義務者の倒産と全額弁済した保証人の求償権
【事案の概要】
T事件
 金融機関AはBに3500万円貸し付け(年利8.1% 遅延損害金14.5%)。
 CとDは連帯保証人。Dについて和議開始決定。一方CはAに弁済。そこでCはDに対して、自己が弁済した額の半分を請求。
 Cの請求認容されたためDが上告。
【判 旨】:破棄差戻し
 「連帯保証人は自己の負担部分を超える額を弁済した場合には、民法465条、442条により他の連帯保証人に対し、負担部分を超える部分についてのみ、求償権を行使しうるにとどまる」
「右連帯保証人に一人に和議開始決定があり、和議認可決定が確定した場合は、右和議開始決定の時点で他の連帯保証人が和議債務者に対して求償権を有していたときは、右求償権が和議債権となり、その内容は和議認可決定により和議条件どおりに変更される」
「和議開始決定の後に弁済したことにより和議債務者に対して求償権を取得するに至った連帯保証人は、債権者が債権全部の弁済を受けたときに限り右弁済による代位によって取得する債権者の和議債権の限度で右求償権を取得するに過ぎない」「けだし、債権者は債権全部の弁済を受けない限り和議債務者に対して和議開始決定当時における和議債権全額について和議条件に従った権利行使が出来る地位にあることからすれば、連帯保証人は債権者が債権全部の弁済を受けるまでの間は、一部弁済を理由に和議債務者に求償することは出来ないと言うべきであり、和議制度の趣旨に…不合理だからである。」

U事件
【事案の概要】
 Zが債権者でXとYは連帯債務者(負担部分平等)。YはZに弁済し、Xに求償権を取得。
Xはその後和議開始決定。和議開始決定を受けたXがYに対して債権の未払い分を求めたところ、YはYのXに対する求償権を相殺を主張。
【判 旨】
「連帯債務者の一人が和議開始の申立てをした場合、他の連帯債務者が和議開始の申立てを知った後に、債権者に債務を弁済したときは、右弁済による求償権の取得は、“和議開始の申立てを知る前の原因に基づくもの”(破産法72条1項4号)と解するのが相当」
「けだし右の場合、和議開始の申立ての前に、求償権発生の基礎となる連帯債務関係がすでに発生しており、右のような求償権による相殺を認めても、和議債権者間の公平を害することはないからである」
「連帯債務者の一人について和議認可決定が確定した場合、和議開始決定後の弁済により連帯債務者にたいして求償権を取得した他の連帯債務者は、債権者が全額の弁済を受けたときに限り、…和議債権の限度で右求償権を取得することが出来る」


44 相続財産破産と相続人の固有財産に対する債権者の権利行使 
【事案の概要】
  Aは国税を滞納したまま死亡し、Xらが相続。限定承認の申述をするも、要件を満たさないとして却下される。XはAの相続財産につき破産申立て、破産宣告。
  他方、Y(大阪国税局長)は、Xが単純承認によりAの滞納国税の4分の1を相続したとして、Xの固有の財産に対し差押処分をなした。
  そこでXは、相続財産について破産手続が開始された場合には、制度の趣旨からみて、被相続人の債権債務の承継という相続の一般的効果が遮断されるとして、差押え処分の取り消しを求めた。
 一審: 相続財産破産の場合も、民法に定める相続の一般的効果が当然に遮断されると解すべき根拠はない。X控訴。
【判旨】 Xの控訴棄却。原判決引用。また、相続財産の破産に限定承認と同様の効果を与えている立法例もあるとして、ドイツの例を引き、わが国の制度がこれを採用するものでないことは明らかであるとした。相続財産に対して破産宣告がなされても、相続人において放棄・限定承認をしておかなければ、相続人は右破産手続の中で弁済されなかった債務を、自己の固有財産によって弁済する責を負う。


45 支配会社の債権の取扱い
 破産会社(子会社)が、破産会社を支配していた親会社の子会社に対する求償債権は一般破産債権ではなく、劣後的破産債権になると主張して債権確定訴訟で争った事件。
 破産会社の主張は主に以下の通り。@制定法上の根拠(破産法中「破産債権」および「財団債権」を支配する債権の優先劣後の基準、および「否認権」を支配する平等原則)、A判例法上の根拠(会社更生事件で、経営者の債権を他の一般債権者のそれと比べて劣後的に扱った更生計画を、また株主および債権者としての親会社の権利を他の株主・債権者よりも劣後的に取り扱った更生計画を適法とした判例あり)、B倒産法上の一般原則、条理、米国及びドイツ判例法。
 @について。破産法上は優先破産債権、劣後的破産債権及びその他の一般破産債権の3段階以外の劣後的取扱いを受ける破産債権を創設し、規律しようとしていると解することはできない。
 Aについて。更生法には衡平を害しない場合には異なった取扱いを許容する明文(更生168条)があり、破産事件である本件とは事案を異にする。
 Bについて。傾聴に値するが、その要件及び効果が明確になっておらず、我が国における学説上も十分な議論が尽くされているとは言い難く、発展途上の段階にあるようであるので、現段階の法解釈としては、現行法上本件に劣後的取扱いを認めることはできない。


NO46:問屋の破産と委託者の取戻権
【事案の概要】
Xは証券会社Aに株式の買い入れを委託し、代金を預託。AはBより株式を買い入れ。Aは甲会社の株式を買い入れたが、X名義に名義書換をすることなくA名義のまま保管。その後Aは破産宣告をうけ、Yが管財人に選任。
Xは、Xが株券の所有者であるとしてYに対して裏書きおよび引渡し、その履行が出来ない場合には株券時価相当額の支払いを求めて訴えを提起。
 原審ではX敗訴したため、X上告。

【判 旨】:破棄差戻し
「問屋が委託の実行として売買をした場合、右売買によりその相手方に対して権利を取得するのは問屋であって委託者ではない。しかし、その権利は委託者の計算に置いて取得されたものであり、かつ、問屋は性質上自己の名においてではあるが、他人のために物品の販売または買い入れをなすを業とする者であることに鑑みれば、問屋の債権者は問屋が委託の実行としてした売買により取得した権利についてまでも自今債権の一般的担保として期待すべきではない」「されば、問屋が前記権利を取得した後、これを委託者に移転しない間に破産した場合においては、委託者は右権利につき取戻権を行使しうると解するのが相当である」


47 第三者異議の訴えと債務者の破産
【事案の概要】 
XはAの妻であったが、昭和42年2月20日に離婚。
昭和42年12月26日、YはAに対する仮差押決定正本に基づき、X方の洋服ダンス等動産に仮差押執行。
 これに対しXは、これら動産が「Xの所有である」旨主張し、仮差押執行の排除を求めて第三者異議の訴え。
原審は、動産をXの所有である旨認定したうえ、Aが破産宣告を受けたからといって、本件動産が42条2項所定の破産財団に属する財産となるものではないとして、Xの請求を認容。
【判旨】 破棄自判。原判決破棄、Xの訴え却下。
  仮差押決定正本に基づいて仮差押執行がされ、本人が破産宣告を受けるに至ったのであるから、本件動産は42条2項にいう破産財団に属する財産となったもので、Yの右仮差押は同条により、破産財団に対してはその効力を失った。→Xが右仮差押の排除を求めて提起した第三者異議の訴えはその訴えの利益を欠く。
  Xとしては、本件動産の所有権を主張してその返還を求めるためには、管財人を相手方として、62条所定の取戻権を行使すべき。


48 財産分与金と取戻権の成否
 離婚における財産分与として金銭の支払を命ずる裁判が確定し、その後に分与者が破産した場合、被分与者は取戻権を行使して金銭の返還請求できるか。
 判例は次の通り判示。財産分与金の支払を目的とする債権は破産債権であって、分与の相手方は取戻権を行使することはできない。
 なぜなら財産分与は分与者に属する財産を相手方へ給付するものであり、その裁判が確定したとしても、被分与者は金銭債権を取得するに過ぎず、債権の額に相当する金員が当然に被分与者に帰属するものではないからである。
 以下は解説。本件判例のポイントは2点。@財産分与の夫婦財産の清算的機能からすれば、財産分与請求権は共有物分割に類する物権的請求権と解する見解もあるが、判例は単なる債権的請求権とした。A破産者の破産手続開始決定前から被分与者は分与者の供託した供託金に対する差押・転付命令請求を申立て同命令を受けていたが、この転付命令が確定する前に、破産手続開始決定がされた本件では、被分与者に供託金取戻請求権が移転したとはいえない、として取戻権の行使を認めなかった。
 財産分与の法的性質に関しては、@婚姻中に形成された夫婦財産の実質的清算ないし潜在的持分権の行使、A離婚後の扶養、B慰謝料、の3要素を含むとする包括説が通説。
 そして扶養料債権については新倒産法が破産債権としたうえで非免責債権とし、被分与者の保護を図っている(253T(4))。また慰謝料債権についても破産債権としている。
 では清算的要素も判例のように破産債権としてよいか。清算が共同財産の現物分割の場合は、名義にかかわりなく、被分与者は持分権の範囲で取戻権を行使できる。管財人に第三者性を認めたとしても管財人は破産者の特定承継人であるから被分与者は対抗要件がなくてもよいからである(民法254)。そうすると現物分割か価格賠償かで結論が異なることになる。
 また既になされた財産分与が民法上詐害行為取消権の対象となるか?について判例は「民法768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認められるに足りるような特段の事情がない限り」詐害行為の対象とはならないと判示して、詐害行為取消権行使の場面を限定的に解している。そうすると財産分与がなされる前後で破産手続開始決定があると、やはり原則的に結論が異なる。
 共有物分割に関する訴訟で、価格賠償することを解除条件として移転登記請求を認める給付判決(例えば「別紙不動産の移転登記手続をせよ。ただし金○○円を原告に支払った場合はこの限りでない」)が一般化している現状に鑑みると、これとパラレルに考えて清算的要素に関しては取戻権を認めることが理論的に素直な解釈と思われる。


NO49:保証事業法に基づく前払い金と信託
【事案の概要】
A社(請負人)はB(注文者)との間で請負契約を締結。Bよりの前払い金が、AのY1信用金庫口座に振り込まれた。
当該前払い金についてY2保証会社がAからBへの前払い金返還債務について保証。
Aはその後営業停止工事続行不可能となったため、Bは本件請負契約を解除し、前払い金の残金を請求し、Y2から支払を受けた。その後Aが破産宣告。Xが管財人に選任。XがAの本件別口預金口座残高の払い戻しを請求したが、Y1はY2との業務委託契約によりY2の承諾がなければ払い戻しが出来ない事を理由に払い戻しを拒否。
そこでXがY1に対して預金残金の払いもどし及び遅延損害金の支払を求めた。
 原審では、AとY2との間に本件預金債権について指名債権質またはこれと類似する担保権設定合意があり、対抗要件の具備をも認め、Y2は別除権を有している等として、X敗訴したため、Xが上告。

【判 旨】:上告棄却
「本件保証約款の定める合意内容に照らせば、本件前払い金が本件預金口座に払い込まれた時点で、BとAとの間で、Bを委託者、Aを受託者、本件前払い金を信託財産として、これを当該工事の必要経費の支払いに充当することを目的とした信託契約が成立したと解することが相当であり、したがって、本件前払い金が本件預金口座に払い込まれただけでは請負代金の支払いがあったとはいえ」ない。
「そして本件預金は、Aの一般財産から分別管理され特定性をもって保管されており、これにつき登記、登録の方法がないから、委託者であるBは、第三者に対しても本件預金が信託財産であることを対抗することが出来るのであって、信託が終了しても信託法63条のいわゆる法定信託が成立した場合も同様であるから、信託財産である本件預金はAの破産財団に組み入れられることはない」


50 会社更生手続と譲渡担保権者
【事案の概要】
 A社、B公庫より1000万円を借入れ、工場内の機械器具につき譲渡担保を設定。
 Aが会社更生を申立て。Bが右債権をX銀行に譲渡、対抗要件具備。
 Xは更生手続で譲渡担保につき更生担保権の届出、管財人Y異議無く確定。
 その後X、本件譲渡担保の目的物である機械器具の引渡しを求める訴え。
 争点: 譲渡担保権者は取戻権者か。
一審: 譲渡担保契約により、機械器具の所有権がXにあると認定。原則として譲渡担保権は取戻権になるが、本件では更生計画による変更があるとしてXの請求棄却。
 原審: 譲渡担保は取戻権としつつ、更生担保権の届出、更生計画により権利の変更がなされ、存続せずXは失権するとして、Xの請求棄却。
【判旨】 Xの上告棄却。
  本件物件の所有権は、譲渡担保契約に基づきXに移転するとしながら、右所有権の移転は確定的なものではなく、両会社間に債権債務関係が存続していたと認定。譲渡担保権者は、更生担保権者に準じてその権利の届出をなし、更生手続によってのみ権利行使をなすべき。目的物に対する所有権は有せず、すなわち取戻権を有しない。
【解 説】 非典型担保について担保的構成をおし進めた有名な判例。
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2009年10月04日

とうさん100選31−40

NO31:保証・担保の供与と無償否認
【事案の概要】
 A会社は資金繰りが悪化したため、材料購入先であるY社に支払い猶予を求めた。BはAの実質上の経営者であるが、AのYに対する一切の債務について連帯保証をし、且つB所有の不動産上に根抵当権を設定。そのさいBは保証料等は何ら受け取っていない。
 その後Bが破産。Xが管財人に選任。根抵当権設定されているBの不動産について任意競売が実施されたところ、XはYに対して根抵当権の設定は160条3項の無償行為に当たると主張。
 原審でY敗訴のためY上告。

【判 旨】:上告棄却
 「根抵当権等の担保の供与は、…破産者がその対価として経済的利益を受けない限り、無償行為に当たると解すべきであり、右に理は主たる債務者が同族会社であり、破産者がその実質的経営者でも妥当する」「無償行為として否認される根拠は、破産者の行為が対価を伴わないものであって破産債権者の利益を害する危険が特に顕著であるため、破産者及び受益者の主観を顧慮することなく、専ら行為の内用及び時期に着目して特殊な否認類型を認めたことにあるから、その無償性は専ら破産者について決すれば足り、受益者の立場で無償であるかどうかは問われない」「破産者の前記保証等の行為とこれにより利益を受けた債権者の出捐との間には事実上の関係があるに過ぎず、また、破産者が取得する事のあるべき求償権も当然には右行為の対価としての経済的利益に当たるとはいえない」


32 手形の買戻と否認の制限
【事案の概要】 6月28日、A支払停止。7月23日破産申立て、その後破産宣告、Xが管財人に就任。
 ところでAは、自己が取得したB振出の約束手形12通をY銀行に交付、手形割引の方法で融資を受けていた。しかし6月28日、@AはYより同手形11通を満期前の買戻し、手形をBに返還 AAはYより手形1通の遡求を受け、支払をなし手形を受け戻し、手形をBに返還。
 そこでXがYに対し、買戻し・受け戻しを否認し、買戻代金と遅延損害金の支払を請求。
一審: Xの請求認容。
原審: Xの請求棄却。手形を買い戻したAがそれを振出人に返還した場合、買戻しが否認されると、Yは振出人に対して権利を行使することができなくなる。@手形の買戻し→163条1項の類推適用、A手形受け戻し→163条1項直接適用により、否認は許されない。
【決定要旨】 破棄差戻し。
・ Xが否認する行為は手形割引に伴う消費貸借契約に基づく債務の弁済行為である。
・ 163条1項は、破産者から手形の支払を受けた者が、その支払がなければ前者に対する訴求権行使のための法定手続をなしえたであろうことを考慮する制度。「債務者の一人又は数人に対する手形場の権利」とは、前者に対する遡求権を指し、「手形の支払」とは約手振出人の支払を指す。本件のように振出人でない破産会社が支払・買戻をした場合、同条項を適用・類推適用する余地はない。
【解 説】 
・ 手形の満期が到来し、振出人が経済的に破綻しているときのジレンマ。所持人は、振出人等に対する手形の呈示による拒絶証書の作成を受けなければ裏書人に対する遡求権を失う。しかし呈示をして支払を受けても、後にそれが否認されれば、もはや拒絶証書の作成はできず遡求権行使の機会が失われる。→遡求権保全のためには支払を求めざるを得ないが、支払を受けても否認されれば遡求権を失うというジレンマがある。この解消が163条1項の目的。
・ 確かに本件のAは裏書人であり、Aの買戻が否認されると、手形がBに返還されているため、Yは手形の返還を受けられずBにも行けないうえ、Aに買戻金を返還しなければならない。
・ しかし、Yは、確かに否認されると権利行使はできなくなるが、そもそも買戻を請求しなくても遡求権を失うわけではなく、上述のジレンマには陥っていない。


33 対抗要件の否認
 管財人が不動産につき相手方に対し、否認権を行使して不動産移転登記抹消登記請求を提起した場合、160条〜162条によって原因行為たる契約自体を否認できないとしても対抗要件否認(164)の要件を満たす場合には、管財人からの主張がなくても裁判所は釈明権を行使して164条につき主張・立証させるよう努めなければならないか。
 164条の趣旨は、対抗要件の充足行為も、本来は、160条・162条によって否認の対象となり得べきであるが、原因行為に否認の理由がない限り、できるだけ対抗要件を具備させることとし、一定の要件を満たす場合にのみ、特にこれを否認し得ることとした点にある。
 (そして、原因行為の否認と対抗要件の否認とが同一訴訟物を理由付ける複数の請求原因という関係に立ち、また、管財人としては原因行為の否認が否定された時には予備的に対抗要件の否認について審判を求めていることが)ほとんど疑いを容れる余地がない。
 したがって裁判所としては、(原因行為を否認する場合に管財人からの主張がなくても)対抗要件の否認について主張・立証させるように努めた上で、この点についても判断すべきことが当然である。
 ※試験委員・笠井正俊先生の解説
 判例は、対抗要件否認(164)につき制限説に立つことを明らかにした。すなわち対抗要件具備行為も、財団にとって権利の移転と同じ価値を有するので、本来、否認の一般規定によって否認できるはずであるが、新たな権利移転ではなく、既に生じた権利移転を完成させる行為に過ぎないから、164条が厳格な要件を定めて、否認を制限したとする。
 制限説に立つと、「支払の停止等があった後」(164)の要件を満たさない場合、すなわち支払停止前または破産開始決定前の対抗要件具備行為について160条1項1号による否認の余地があるかという問題が残り、同条の要件を満たせば認められるとする肯定説と164条の場合に限られるとする否定説がある。
 これに対し創造説(原因行為が否認できない以上、対抗要件はその義務の履行であって財産の減少をもたらさないので、本来は否認できないはずであるが、特に164条がその要件を満たすような遅れた対抗要件具備行為を特に否認の対象とすることとしたとする説)からは、同条の要件を満たさない限り対抗要件の否認は認められないというのが当然の帰結となる。


NO34:停止条件付集合債権譲渡契約と否認権
【事案の概要】
AはYとの間で、AのYに対して負担する一切の債務の担保のため、Aの特定の第三債務者らに対する現在及び将来の売掛代金債権等をYに包括譲渡することとし、その債権の譲渡の発生時期は、Aにおいて、破産手続開始の申立がなされたとき、支払停止の状態に陥ったとき等の一定の事由が生じたとき、とする旨の契約を締結。
 その後Aが破産しXが管財人に選任。XはYに対して、本件債権譲渡契約に係る債権譲渡については162条1項に基づき、債権譲渡の通知については164条に基づき、否認権を行使し、Yが第三債務者から弁済として受領した金員の返還、未弁済の債権についてXに帰属することの確認を求めた。
 原審でY敗訴したため、Y上告。

【判 旨】:上告棄却
「160条1項の趣旨は、債務者に支払停止等があったとき以降の時期を債務者の財産的な危機時期とし、危機時機の到来後に行われた債務者による上記担保の供与等の行為をすべて否認の対象とすることにより、債権者間の平等および破産財団の充実を図ろうとするものである」
「支払停止等を停止条件とする債権譲渡契約はその契約締結自体は危機時期前に行われるものであるが、契約当事者はその契約に基づく債権譲渡の効力の発生を債務者の支払停止等の危機時期の到来にかからしめ、これを支払停止とすることにより、危機時期に至るまで債務者の責任財産に属していた債権を債務者の危機時期が到来するや直ちに当該債権者に帰属させることによって、これを責任財産から逸出させることをあらかじめ意図する」ものであって、係る契約は「破産法160条1項の実効性を失わせるものであって、その契約内容を実質的にみれば、上記契約に係る債権譲渡は、債務者に支払停止等の危機時機が到来した後に行われた債権譲渡と同視するべきものであり、上記規定に基づく否認権行使の対象となる」


35 執行行為の否認
【事案の概要】
Aの債権者Yは、Aに対して執行証書による貸金債権を有していた。
10月5日、Aが1回目の手形不渡り。
12月7日、Yが執行証書に基づき、Aが福岡市に対して有する請負代金債権の差押取立命令を取得、約1500万円を取得。
12月16日、A破産宣告、Xが破産管財人に就任。
XがYに対して否認権行使の訴えを提起。主位的にはYの行為は債務消滅に関する執行行為にあたる(165条、および旧72条2号故意否認)。予備的には、破産債権者を害することを知ってした執行行為にあたる(165条、および旧72条2号)と主張。
一審も原審も、否認権行使のためには、破産者の害意ある加功は要件ではないとしてXの請求認容。Y上告。
【判旨】 上告棄却。執行行為に基づく「債務の消滅に関する行為」の故意否認については、破産者の害意ある加功は必要でない。
【解 説】
・ 現行法は従来の故意否認・危機否認から、詐害行為否認(160条1項)・偏頗行為否認(162条1項)の区別になった。後者はさらに、担保の供与または債務の消滅に関する行為を除き、@時期を問わず詐害行為を対象にするもの(160条1項1号) A支払停止または開始申立て後の詐害行為を対象にするもの(同2号)に分かれる。
・ 現行法では、Aの詐害行為否認または偏頗行為否認につき、破産者の主観的要件が要求されていない→執行行為として行われる場合に、破産者の害意ある加功を要しない。


36 仮登記仮処分の否認
 不動産登記法上の仮登記仮処分命令を得てする仮登記は、仮登記権利者が単独で申請し、仮登記義務者は関与しないものであるが、これも164条の対抗要件具備行為の否認の対象となるか。(前提として本判例が引用する最判昭和40年3月9日によれば、「対抗要件充足行為は、破産者の行為またはこれと同視すべきものに限られる」とした。そこで本件仮登記仮処分が「破産者の行為…と同視すべきもの」に含まれるか。)
 仮登記は、それ自体で対抗要件を充足させるものではないが、本登記の際の順位を保全し、破産財団に対してもその効力を有するものであるから、仮登記も対抗要件を充足させる行為に準ずるものとして164条1項の対象となる。
 そして仮登記仮処分においても同様。なぜなら仮登記仮処分は、その効力において共同申請による仮登記と何ら異なるところはなく、否認権行使の対象とするにつき両者を区別して扱う合理的な理由はないこと、実際上も、仮登記仮処分命令は、仮登記義務者の処分意思が明確に認められる文書等が存するときに発令されるのが通例であることにかんがみると、仮登記仮処分命令に基づく仮登記も、破産者の行為があった場合と同視し、これに準じて否認することができるものと解するのが相当であるから。
 (因みに上記昭和40年判決では、破産者の行った債権譲渡についての債務者の承諾が否認の対象とならないとした。本件仮登記仮処分と債務者の承諾とで結論が異なることになるが、これにどう整合性をつけるかが問題として残る)


NO37:相殺と否認
【事案の概要】
 ZはY社の従業員だったが、Yを退職後に破産し、Xが管財人に選任。
Zは在職中、社内の住宅財形融資制度により低利且つ無担保で住宅資金を借り入れ、返済は給与から控除され、退職時は退職金で一括返済する約束だった。その約定どおりYは貸付金と退職金とを相殺処理。
 Zの破産管財人となったXが@Yの本件相殺による一括返済は賃金の直接・全額払いを定める労働基準法に違反する、A本件相殺は他の破産債権者を害するのでこれを否認する、としてYに一括払いを求めた。
 原審では本件相殺は否認の対象とならないとしてY勝訴したため、Xが上告。

【判 旨】:上告棄却
労働法上の争点は省略
「債権者の相殺権の行使は、債務者の破産宣告の前後を通じ、否認権行使の対象とはならないものと解すべきであるから、本件相殺におけるY社の相殺権の行使自体、否認権の対象とはならない」


38 否認の登記と転得者 ※大阪高裁判決
【事案の概要】
  破産者Aが、Bに対し本件建物を売却し、A→B所有権移転登記。しかし管財人Xが売買を否認、260条1項により否認の登記。
  しかしその後、B→Yへ売買、所有権移転登記がなされていた。
  そこでXはYに対し、所有権移転登記の抹消登記手続を請求。
  一審はXの請求認容。
【判旨】 Yの控訴を棄却。
  否認登記は、管財人を登記権利者、相手方を登記義務者とする暫定的な実質上の抹消登記であり、破産終結時において否認の効力が消滅して否認された登記を現状に回復する場合に抹消登記の回復登記によることを要しないよう、特殊の記入登記の形態をとる。すなわち、否認登記の記入により、登記簿上には相手方の所有名義が残存しているとはいえ、その実質において右所有名義は否定されており、爾後、相手方は登記義務者とはなり得ない。
【解 説】 否認権の行使によって破産者から受益者等に移転した財産権は当然に物権的に破産財団に復帰するが(167条1項)、その効力は破産財団との関係においてのみ相対的に生ずる。そこで否認の登記とは、各種登記(通常の移転登記や抹消登記)とは異なる登記が必要ではないかが問題となる。
特殊登記説(通説): 特別な登記が必要。
各種登記説: 通常の抹消登記でよい。否認の登記が残っていると、管財人が当該財産権を処分しようとしても、買受人が不安を抱き換価に支障を生ずる。
新法では、否認の登記がなされた目的物の任意売却等を原因とする移転登記の際に、登記官は、当該否認の登記を職権で抹消しなければならないと定め(260条2項)、換価が円滑に行われるよう配慮している。


39 弁済否認と連帯保証債務の復活
 債務者たる破産者が債権者に対し債務の弁済をした場合に、この弁済が破産管財人により否認され、その納付したものが破産財団に復帰したときは、貸金債権に付従していた連帯保証債務も復活するか。
 判例は、一旦消滅した連帯保証債務は当然復活すると解するのが相当であるとした。
 判例の当然復活説を前提とすると不都合な点が生起する。
 @例えば、債権者甲に弁済した破産者たる連帯債務者乙が連帯債務者丙に求償して丙が負担部分に応じて償還した後に、乙が破産手続開始決定を受けて弁済が否認された場合、当該連帯債務が復活すると、丙は乙に償還した上になお甲に対し全額弁済の責を負うことになり、苛酷かつ不合理である。これに対しては丙の償還部分が乙の財産に帰属する以上、否認の対象となるのは、破産財団に属する財産の価値が減少する限度、すなわち丙の償還部分を除いた部分と解すれば不都合性は回避できる。
 また、A物上保証の場合、破産者たる債務者の弁済によって担保権の登記が抹消された後に、当該不動産が第三者に譲渡されかつ登記された場合には、取引の安全の見地から担保権は復活しないと解すべきである。ただし、その場合、物上保証人は担保権の回復に代わる経済的利益を債権者に提供する義務を負うと解することで足りるであろう。

NO40:否認による価額償還
【事案の概要】
A社は破産宣告をうけXが管財人に選任。XはYがA所有のトラック1台を搬出しその所有権を失わせたので主位的に不法行為による損害賠償を請求する、仮にYがAに対する債権との相殺を意図してトラックの搬出をしたとしても予備的に破産法による否認権行使に基づく価額償還を求めた。
 原審では価額償還請求権の発生は肯定したものの、本件においてはその価額の立証がなされていないとしてX敗訴。そのためXが上告。

【判 旨】:破棄差戻し
「否認権行使の結果、元物の返還が不可能なためこれに代えてその価額を償還すべき場合には、その償還すべき金額は破産法167条の法意に照らし、否認権行使の時価を持って算出するべき」
「訴訟の経緯に照らすと、原審が本件価額償還請求権の発生を肯認しながら、Xに対し否認権行使時の時価の立証を促さないまま、その価額の立証がないとの理由で直ちにXの前記請求を排斥したことは著しく不相当な措置であるといわざるを得」ない。
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