1.処分性(行政事件訴訟法3条2項)
行政上の法令に基づくすべてを意味するものではなく、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を画することが法律上認められているものをいう(最判昭39.10.29)。
→
@公権力主体性、
A直接法効果性
2.原告適格(行政事件訴訟法9条1項、2項)
「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。
具体的には、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益をもっぱら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、かかる利益も右にいう法律上保護された利益にあたり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう(最判昭53.3.14)。
→ポイントは、9条2項の文言を使いこなせるかどうか。
3.国家賠償請求における違法性(国家賠償法1条)
取消訴訟は公権力の行使に対して不服を申し立てる訴訟であるが、国家賠償請求訴訟はあくまで民事訴訟の一つとして金銭賠償を求めるにすぎず、両者は制度的に異なる。
そこで、違法とは、公務員が職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と行為をしたと認め得るような事情がある場合をいうものと解する(最判平5.3.11)。
→取消訴訟との違い
4.裁量権の逸脱・濫用(行政事件訴訟法30条)
<伝統的基準>
@事実誤認 Ex マクリーン
「その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか」
A目的違反・動機違反
B信義則違反
C平等原則違反(憲法14条1項)
D比例原則違反
「社会通念上著しく妥当性を欠くかどうか」
<判断過程基準>
@判断過程に着目して合理性を審査する方法
「判断の過程に看過し難い過誤があり、これに依拠した場合に違法となる。」
A判断過程の合理性の審査
他事考慮等
5.理由付記(行政手続法8条1項本文、14条1項本文)
同上の趣旨は、@行政庁の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに、A拒否の理由を申請者に知らせることによって、その不服申立てに便宜を与えることにある。
この趣旨から、付記すべき理由としては、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して拒否処分がされたかを、申請者においてその記載自体から了知しうるものでなければならず、単に根拠規定を示すだけでは足りない(最判昭60.1.22)。
→理由の追加、理由の差替
6.重大かつ明白な瑕疵
重大かつ明白な瑕疵というのは、処分の要件存在を肯定する処分庁の認定に重大・明白な瑕疵がある場合を指すものと解すべきである。そして、瑕疵が明白というのは、処分成立の当初から、誤認であることが外形上、客観的に明白である場合を指すものと解する。
7.違法性の承継
行政上の法律関係は、早期に安定させる必要があるから、違法性の承継は認められないのが原則である。
しかし、取消訴訟の排他的管轄に服する行為について、救済の余地を拡げる必要もある。
そこで、@一つの手続ないし過程において複数の行為が連続している場合において、Aこれらの行為が結合して一つの法効果の発生を目指す場合に例外的に違法性の承継が認められると解する。
8.行政指導の限界(行政手続法32条、33条)
<建築確認留保の事案>
許可あるいは確認申請に対して、行政庁が裁量権を有する場合、行政庁は行政指導に付随して処分を留保することができるか。
思うに、行政活動が、社会の複雑化に伴って市民生活に深く介入せざるを得ない現代福祉国家にあっては、行政指導が要求される。
そこで、@行政指導は、それに対する相手方の不服従の意思表示が真摯かつ明確なものであること、およびA相手方の不服従が社会通念上正義の観念に反するといえないという要件を具備する場合に違法になるものと解する。
※不作為の違法確認訴訟の事案では基準が異なる点に注意を要する。
<教育施設負担金の事案>
強制にわたるなど事業主の任意性を損なうことがない限り、違法ということはできない(最判平5.2.18)。
9.行政代執行の可否(行政代執行法2条)
代執行の要件 〜戒告、通知
@「他人が代わってなすことのできる」義務(代執行法2条)
→ 代替的作為義務
A「他の手段によってその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認めるとき」
10.法規命令の限界
法規命令を制定する行政機関は、法律に違反する命令を制定することはできない。
そこで、委任の範囲を逸脱した法規命令は違法であると解する。
11.確認の利益 (行政事件訴訟法4条後段)
要件
@対象選択の適否
A方法選択の適否
→行政法では重要問題
B即時確定の利益
12.情報公開法における適用除外(情報公開法5条)
※条文の読み方に注意
個人情報: 原則不開示(5条1号本文)
他の情報: 原則開示(5条2号)
13.公定力の限界
意義: 行政行為はたとえ違法であっても、行政庁自らが職権により取消しまたは撤回する場合は別段、相手方等の争訟の提起に基づき行政庁または裁判所が取消の措置をとらない限り、一応有効に通用するとの効力をいう。
→ 取消訴訟の排他的管轄
<刑事事件との関係> 余目町公衆浴場事件
違法な行政処分によって命ぜられた義務に違反したため行政刑罰を科する場合等に、刑事被告人は、当該行政行為が違法であることを抗弁として提出し、罪責を免れることができるかが問題となる。
思うに、行政刑罰は、適法な行政命令への服従を強いる機能までも有するとみるべきではない。行政行為の公定力は、民事関係における仮の効力を承認するにすぎない。
そこで、刑事法関係においては被告人は、処分の違法を立証すれば、その無効を主張するまでもなく刑罰を免れることができると解する。
<国家賠償請求との関係>
行政行為の違法を主張して国家賠償請求をなす場合、行政行為をあらかじめ取消しておかなければならないか。
思うに、公定力は、行政目的の円滑な実現と法的安定性の要請から、行政行為の効力を維持せしめるためのものであり、違法な行為を適法なものとして通用せしめるものではない。他方、国家賠償請求で問題となるのは、行政行為の違法性の有無であり、効力の有無ではない。
そこで、行政行為の違法を主張して国家賠償請求をなす場合、行政行為をあらかじめ取消しておく必要はないと解する。
14.行政行為の撤回・取消
<行政行為の取消し>
行政行為の取消しとは、有効に成立した行政行為について、その成立に瑕疵があることを理由として、その法律上の効力を失わしめるために行われる行政行為をいう。
取消し原因がある場合、かような瑕疵は速やかに除去されるべきであるから、その取消しについて明示の法律上の根拠は必要でないと解する。
もっとも、一度行政行為がなされると、それを基礎に新しく法律秩序が形成されていくので、これを取消してしまうと相手方私人及び関係者に不測の損害を与えるおそれがある。
そこで、取消しによる公益上の必要性と、取消しによって侵害されるであろう私人の権利・利益間での総合的な利益衡量によって個別具体的に判断すべきと解する。
<行政行為の撤回>
行政行為の撤回とは、行政行為の成立時に瑕疵がないとき、その後の事情により、その法律関係を存続させることが妥当でないということが生じたときに、この法律関係を消滅させる行政行為をいう。
行政行為の公益適合性をまっとうする見地から、行政行為の撤回に法律上の根拠は不要であると解する。
もっとも、一度行政行為がなされると、それを基礎に新しく法律秩序が形成されていくので、これを撤回してしまうと相手方私人及び関係者に不測の損害を与えるおそれがある。
そこで、撤回による公益上の必要性と、取消しによって侵害されるであろう私人の権利・利益間での総合的な利益衡量によって個別具体的に判断すべきと解する。
※行政行為の撤回に際しては、原則として聴聞手続が必要であるという点に注意。
※両者はパラレルに思考すべし
15.信頼の原則
信頼保護が認められるためには、@個別具体的措置、A実行活動、B客観的依存性、Cその他の事情を考慮して判断すべきと解するのが相当である。