2009年10月05日

とうさん100選41−50

41 否認の効果が及ぶ範囲 ※平成17年最高裁判決
【事案の概要】
  Aはゴルフ場経営会社で、Bの100%子会社。BのC銀行に対する債務を担保するため、A所有の各不動産(土地294筆など)を担保に根抵当権設定。これによりAは債務超過に。AもCも、これによりAの債権者が完全な弁済を受けられなくなることにつき悪意。
  Aのゴルフクラブ会員Dらが、民法424条の詐害行為取消を主張し、Cに対し登記の抹消を求める訴え。
  その後Aにつき更生手続開始決定、Xが管財人となり、右訴訟を受継。会社更生法の否認権を行使して、各不動産の全体について否認登記手続を請求。
  一審: 否認権行使の範囲は、債務超過部分に相当する部分にとどまるとして、一部の土地についてしか認めなかった。
原審: Xの否認権行使を認め、各不動産全体に及ぶとした。
【判旨】 Yの上告棄却。
・ 更生手続開始により裁判所より選任された管財人による否認権の行使は、更生債権者等に対する弁済原資を確保し、更生会社の事業の維持更生を図る目的の下、その職責場行使するもの。民法424条で一般の債権者が、個別的に、自らの債権確保のために行使する詐害行為取消権とは異なり、債権額の限界は存在しない。
・ 更生債権も、更生会社に属する財産の価額も、更生法所定の手続により確定すべきもの。管財人の否認権の行使の時点ではいずれも確定しているわけではないことに照らせば、目的物が複数で可分であったとしても、そのすべてに否認の効果が及ぶと解するのが相当。


42 破産債権に対する自由財産からの弁済と不当利得の成否
 地方公務員等共済組合法115条2項所定の方法により、給与支払機関であるB事務組合が、破産者の退職金のうち4分の1を破産財団に交付し、残額(すなわち破産者の自由財産)から一部を共済組合に対する貸付金の弁済として交付した場合、破産者は貸付金の弁済として交付された金額を不当利得として返還請求できるか。
 破産法は破産財団を破産手続開始決定時の財産に固定する(34T)とともに、破産債権者は破産手続によらなければその破産債権を行使することができない(100)と規定し、破産者の経済的更生と生活保障を図っていることからすると、破産者の自由財産に対する強制執行はできないと解されるが、破産者がその自由な判断により自由財産の中から破産債権に対する任意の弁済をすることは妨げられないと解するのが相当である。
 もっとも自由財産は本来破産者の経済的更生と生活保障のために用いられるものであり、破産者は破産手続中に自由財産から破産債権に対する弁済を強制されるものではないことからすると、破産者がした弁済が任意の弁済に当たるか否かは厳格に解すべきであり、少しでも強制的な要素を伴う場合には任意の弁済に当たるということはできない。
 本件では任意性を肯定し得る事情は窺われないので、破産者による任意の弁済であるということはできない。
 (自由財産から任意の弁済ができるか?という点につきこれを認めるのが判例・通説である。この積極説に対して、消極説からは、これを認めると破産債権者からの圧力が危惧されると批判されるが、判例のように任意性の要件を厳格に認定すれば良い)


NO43:数人の全部義務者の倒産と全額弁済した保証人の求償権
【事案の概要】
T事件
 金融機関AはBに3500万円貸し付け(年利8.1% 遅延損害金14.5%)。
 CとDは連帯保証人。Dについて和議開始決定。一方CはAに弁済。そこでCはDに対して、自己が弁済した額の半分を請求。
 Cの請求認容されたためDが上告。
【判 旨】:破棄差戻し
 「連帯保証人は自己の負担部分を超える額を弁済した場合には、民法465条、442条により他の連帯保証人に対し、負担部分を超える部分についてのみ、求償権を行使しうるにとどまる」
「右連帯保証人に一人に和議開始決定があり、和議認可決定が確定した場合は、右和議開始決定の時点で他の連帯保証人が和議債務者に対して求償権を有していたときは、右求償権が和議債権となり、その内容は和議認可決定により和議条件どおりに変更される」
「和議開始決定の後に弁済したことにより和議債務者に対して求償権を取得するに至った連帯保証人は、債権者が債権全部の弁済を受けたときに限り右弁済による代位によって取得する債権者の和議債権の限度で右求償権を取得するに過ぎない」「けだし、債権者は債権全部の弁済を受けない限り和議債務者に対して和議開始決定当時における和議債権全額について和議条件に従った権利行使が出来る地位にあることからすれば、連帯保証人は債権者が債権全部の弁済を受けるまでの間は、一部弁済を理由に和議債務者に求償することは出来ないと言うべきであり、和議制度の趣旨に…不合理だからである。」

U事件
【事案の概要】
 Zが債権者でXとYは連帯債務者(負担部分平等)。YはZに弁済し、Xに求償権を取得。
Xはその後和議開始決定。和議開始決定を受けたXがYに対して債権の未払い分を求めたところ、YはYのXに対する求償権を相殺を主張。
【判 旨】
「連帯債務者の一人が和議開始の申立てをした場合、他の連帯債務者が和議開始の申立てを知った後に、債権者に債務を弁済したときは、右弁済による求償権の取得は、“和議開始の申立てを知る前の原因に基づくもの”(破産法72条1項4号)と解するのが相当」
「けだし右の場合、和議開始の申立ての前に、求償権発生の基礎となる連帯債務関係がすでに発生しており、右のような求償権による相殺を認めても、和議債権者間の公平を害することはないからである」
「連帯債務者の一人について和議認可決定が確定した場合、和議開始決定後の弁済により連帯債務者にたいして求償権を取得した他の連帯債務者は、債権者が全額の弁済を受けたときに限り、…和議債権の限度で右求償権を取得することが出来る」


44 相続財産破産と相続人の固有財産に対する債権者の権利行使 
【事案の概要】
  Aは国税を滞納したまま死亡し、Xらが相続。限定承認の申述をするも、要件を満たさないとして却下される。XはAの相続財産につき破産申立て、破産宣告。
  他方、Y(大阪国税局長)は、Xが単純承認によりAの滞納国税の4分の1を相続したとして、Xの固有の財産に対し差押処分をなした。
  そこでXは、相続財産について破産手続が開始された場合には、制度の趣旨からみて、被相続人の債権債務の承継という相続の一般的効果が遮断されるとして、差押え処分の取り消しを求めた。
 一審: 相続財産破産の場合も、民法に定める相続の一般的効果が当然に遮断されると解すべき根拠はない。X控訴。
【判旨】 Xの控訴棄却。原判決引用。また、相続財産の破産に限定承認と同様の効果を与えている立法例もあるとして、ドイツの例を引き、わが国の制度がこれを採用するものでないことは明らかであるとした。相続財産に対して破産宣告がなされても、相続人において放棄・限定承認をしておかなければ、相続人は右破産手続の中で弁済されなかった債務を、自己の固有財産によって弁済する責を負う。


45 支配会社の債権の取扱い
 破産会社(子会社)が、破産会社を支配していた親会社の子会社に対する求償債権は一般破産債権ではなく、劣後的破産債権になると主張して債権確定訴訟で争った事件。
 破産会社の主張は主に以下の通り。@制定法上の根拠(破産法中「破産債権」および「財団債権」を支配する債権の優先劣後の基準、および「否認権」を支配する平等原則)、A判例法上の根拠(会社更生事件で、経営者の債権を他の一般債権者のそれと比べて劣後的に扱った更生計画を、また株主および債権者としての親会社の権利を他の株主・債権者よりも劣後的に取り扱った更生計画を適法とした判例あり)、B倒産法上の一般原則、条理、米国及びドイツ判例法。
 @について。破産法上は優先破産債権、劣後的破産債権及びその他の一般破産債権の3段階以外の劣後的取扱いを受ける破産債権を創設し、規律しようとしていると解することはできない。
 Aについて。更生法には衡平を害しない場合には異なった取扱いを許容する明文(更生168条)があり、破産事件である本件とは事案を異にする。
 Bについて。傾聴に値するが、その要件及び効果が明確になっておらず、我が国における学説上も十分な議論が尽くされているとは言い難く、発展途上の段階にあるようであるので、現段階の法解釈としては、現行法上本件に劣後的取扱いを認めることはできない。


NO46:問屋の破産と委託者の取戻権
【事案の概要】
Xは証券会社Aに株式の買い入れを委託し、代金を預託。AはBより株式を買い入れ。Aは甲会社の株式を買い入れたが、X名義に名義書換をすることなくA名義のまま保管。その後Aは破産宣告をうけ、Yが管財人に選任。
Xは、Xが株券の所有者であるとしてYに対して裏書きおよび引渡し、その履行が出来ない場合には株券時価相当額の支払いを求めて訴えを提起。
 原審ではX敗訴したため、X上告。

【判 旨】:破棄差戻し
「問屋が委託の実行として売買をした場合、右売買によりその相手方に対して権利を取得するのは問屋であって委託者ではない。しかし、その権利は委託者の計算に置いて取得されたものであり、かつ、問屋は性質上自己の名においてではあるが、他人のために物品の販売または買い入れをなすを業とする者であることに鑑みれば、問屋の債権者は問屋が委託の実行としてした売買により取得した権利についてまでも自今債権の一般的担保として期待すべきではない」「されば、問屋が前記権利を取得した後、これを委託者に移転しない間に破産した場合においては、委託者は右権利につき取戻権を行使しうると解するのが相当である」


47 第三者異議の訴えと債務者の破産
【事案の概要】 
XはAの妻であったが、昭和42年2月20日に離婚。
昭和42年12月26日、YはAに対する仮差押決定正本に基づき、X方の洋服ダンス等動産に仮差押執行。
 これに対しXは、これら動産が「Xの所有である」旨主張し、仮差押執行の排除を求めて第三者異議の訴え。
原審は、動産をXの所有である旨認定したうえ、Aが破産宣告を受けたからといって、本件動産が42条2項所定の破産財団に属する財産となるものではないとして、Xの請求を認容。
【判旨】 破棄自判。原判決破棄、Xの訴え却下。
  仮差押決定正本に基づいて仮差押執行がされ、本人が破産宣告を受けるに至ったのであるから、本件動産は42条2項にいう破産財団に属する財産となったもので、Yの右仮差押は同条により、破産財団に対してはその効力を失った。→Xが右仮差押の排除を求めて提起した第三者異議の訴えはその訴えの利益を欠く。
  Xとしては、本件動産の所有権を主張してその返還を求めるためには、管財人を相手方として、62条所定の取戻権を行使すべき。


48 財産分与金と取戻権の成否
 離婚における財産分与として金銭の支払を命ずる裁判が確定し、その後に分与者が破産した場合、被分与者は取戻権を行使して金銭の返還請求できるか。
 判例は次の通り判示。財産分与金の支払を目的とする債権は破産債権であって、分与の相手方は取戻権を行使することはできない。
 なぜなら財産分与は分与者に属する財産を相手方へ給付するものであり、その裁判が確定したとしても、被分与者は金銭債権を取得するに過ぎず、債権の額に相当する金員が当然に被分与者に帰属するものではないからである。
 以下は解説。本件判例のポイントは2点。@財産分与の夫婦財産の清算的機能からすれば、財産分与請求権は共有物分割に類する物権的請求権と解する見解もあるが、判例は単なる債権的請求権とした。A破産者の破産手続開始決定前から被分与者は分与者の供託した供託金に対する差押・転付命令請求を申立て同命令を受けていたが、この転付命令が確定する前に、破産手続開始決定がされた本件では、被分与者に供託金取戻請求権が移転したとはいえない、として取戻権の行使を認めなかった。
 財産分与の法的性質に関しては、@婚姻中に形成された夫婦財産の実質的清算ないし潜在的持分権の行使、A離婚後の扶養、B慰謝料、の3要素を含むとする包括説が通説。
 そして扶養料債権については新倒産法が破産債権としたうえで非免責債権とし、被分与者の保護を図っている(253T(4))。また慰謝料債権についても破産債権としている。
 では清算的要素も判例のように破産債権としてよいか。清算が共同財産の現物分割の場合は、名義にかかわりなく、被分与者は持分権の範囲で取戻権を行使できる。管財人に第三者性を認めたとしても管財人は破産者の特定承継人であるから被分与者は対抗要件がなくてもよいからである(民法254)。そうすると現物分割か価格賠償かで結論が異なることになる。
 また既になされた財産分与が民法上詐害行為取消権の対象となるか?について判例は「民法768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認められるに足りるような特段の事情がない限り」詐害行為の対象とはならないと判示して、詐害行為取消権行使の場面を限定的に解している。そうすると財産分与がなされる前後で破産手続開始決定があると、やはり原則的に結論が異なる。
 共有物分割に関する訴訟で、価格賠償することを解除条件として移転登記請求を認める給付判決(例えば「別紙不動産の移転登記手続をせよ。ただし金○○円を原告に支払った場合はこの限りでない」)が一般化している現状に鑑みると、これとパラレルに考えて清算的要素に関しては取戻権を認めることが理論的に素直な解釈と思われる。


NO49:保証事業法に基づく前払い金と信託
【事案の概要】
A社(請負人)はB(注文者)との間で請負契約を締結。Bよりの前払い金が、AのY1信用金庫口座に振り込まれた。
当該前払い金についてY2保証会社がAからBへの前払い金返還債務について保証。
Aはその後営業停止工事続行不可能となったため、Bは本件請負契約を解除し、前払い金の残金を請求し、Y2から支払を受けた。その後Aが破産宣告。Xが管財人に選任。XがAの本件別口預金口座残高の払い戻しを請求したが、Y1はY2との業務委託契約によりY2の承諾がなければ払い戻しが出来ない事を理由に払い戻しを拒否。
そこでXがY1に対して預金残金の払いもどし及び遅延損害金の支払を求めた。
 原審では、AとY2との間に本件預金債権について指名債権質またはこれと類似する担保権設定合意があり、対抗要件の具備をも認め、Y2は別除権を有している等として、X敗訴したため、Xが上告。

【判 旨】:上告棄却
「本件保証約款の定める合意内容に照らせば、本件前払い金が本件預金口座に払い込まれた時点で、BとAとの間で、Bを委託者、Aを受託者、本件前払い金を信託財産として、これを当該工事の必要経費の支払いに充当することを目的とした信託契約が成立したと解することが相当であり、したがって、本件前払い金が本件預金口座に払い込まれただけでは請負代金の支払いがあったとはいえ」ない。
「そして本件預金は、Aの一般財産から分別管理され特定性をもって保管されており、これにつき登記、登録の方法がないから、委託者であるBは、第三者に対しても本件預金が信託財産であることを対抗することが出来るのであって、信託が終了しても信託法63条のいわゆる法定信託が成立した場合も同様であるから、信託財産である本件預金はAの破産財団に組み入れられることはない」


50 会社更生手続と譲渡担保権者
【事案の概要】
 A社、B公庫より1000万円を借入れ、工場内の機械器具につき譲渡担保を設定。
 Aが会社更生を申立て。Bが右債権をX銀行に譲渡、対抗要件具備。
 Xは更生手続で譲渡担保につき更生担保権の届出、管財人Y異議無く確定。
 その後X、本件譲渡担保の目的物である機械器具の引渡しを求める訴え。
 争点: 譲渡担保権者は取戻権者か。
一審: 譲渡担保契約により、機械器具の所有権がXにあると認定。原則として譲渡担保権は取戻権になるが、本件では更生計画による変更があるとしてXの請求棄却。
 原審: 譲渡担保は取戻権としつつ、更生担保権の届出、更生計画により権利の変更がなされ、存続せずXは失権するとして、Xの請求棄却。
【判旨】 Xの上告棄却。
  本件物件の所有権は、譲渡担保契約に基づきXに移転するとしながら、右所有権の移転は確定的なものではなく、両会社間に債権債務関係が存続していたと認定。譲渡担保権者は、更生担保権者に準じてその権利の届出をなし、更生手続によってのみ権利行使をなすべき。目的物に対する所有権は有せず、すなわち取戻権を有しない。
【解 説】 非典型担保について担保的構成をおし進めた有名な判例。


posted by あひるねこ at 00:00| とうさん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。