2009年10月01日

とうさん100選1−10

No1:破産手続と憲法的保障
【事案の概要】
@ Xは債権者申立てにより破産手続開始決定を受けた→Xは申立て債権および破産原因の不存在を主張し抗告→棄却→Xは特別抗告=破産開始決定および抗告棄却決定は口頭弁論を経ないでなされた以上、憲法82条・32条。76条3項に反する。
A Xは破産者の免責決定に対して異議を申し立てたものの免責決定が下された→Xが抗告→棄却→Xは特別抗告=免責決定について口頭弁論の機会を保障しないのは憲法32条に反する。

【判 旨】
@に対して:抗告棄却
 「憲法82条に言う裁判とは固有の司法権の作用に属する裁判を言う。…(一方)破産裁判所がする抗告棄却決定は…固有の司法権の作用に属する裁判には該当しない」
Aに対して:抗告棄却
「免責の裁判は…本質的に非訟事件についての裁判であるから…憲法32条に反するものではない」


NO2 倒産手続と憲法的保障(2) 財産権の保障
【事案の概要】 XはA株式会社の更生債権者。Xが更生債権を届け出。更生管財人が届出金額に異議、しかしXは債権確定の訴え起こさず。⇒Xの更生債権は異議の分少なく認定され、他の一般更生債権者は50%免除、Xの更生債権は約87%免除。Xは、Aのごとき営利目的の私企業を他の企業の一方的犠牲の上に保護するのは私人の財産権を侵し、憲法29条違反として特別抗告。

【決定要旨】 抗告棄却。会社更生法は、「企業を破産により解体清算させることが、ひとり利害関係人の損失となるに止まらず、広く社会的、国民経済的損失をもたらすことがあるのにかんがみ、窮境にはあるが再建の見込みのある株式会社について、債権者、株主その他の利害関係人の利害を調整しつつ、その事業の維持再生を図ることを目的とする」。「…更生手続によって更生債権者らの財産権が制限されることは明らかであるが、右法条の定める財産権の制限は、前記目的を達成するためには必要にしてやむを得ないものと認められる。」
しかも更生手続は裁判所の監督のもと法定の厳格な手続に従って進められるし、綿密な規定に基づいて関係人集会による審理・議決を経たうえ、裁判所の認可によって効力を生ずる。⇒各規定は、公共の福祉のため憲法上許された必要かつ合理的な財産権の制限を定めたものと解するのが相当であり、憲法29条に違反しない。


NO3 財産区の破産能力
 財産又は営造物を有するいわゆる財産区は、市町村の一部で、市町村条例をもって区会を設置すると否とを問わず、また、…国の行政区画たる性質を有すると有さざるとに関せず、法人格を有し、私法上の権利能力を享有して私法関係の当事者となり得るも、その性質上これを解散して一般的清算手続をこれに許容し得べきものではない。
 従って、市町村の一部たる財産区は破産宣告を受けるべき適格を有しないものと解するのが相当。(原文はカタカナ)


NO4:支払い不能(1)
【事案の概要】
 Xは支払い不能の状態にあるとして破産開始決定を受けた→Xが抗告=@支払い停止していない、A支払い不能ではない

【判 旨】:抗告棄却
・「債務者が支払い不能の状態にあるものと認めるときは、支払い停止について判断するまでもなく、破産開始決定をするべき」
・ 「支払い不能とは、破産者が一般的に金銭債務の支払をすることが出来ない客観的状態」をいう。」「弁済力は財産・信用及び労務の三者から成立しているものと解されるから…順次検討」


5 支払不能(2) 不法行為債務の場合 ※東京地裁決定
【事案の概要】 ゴルフ場会員権を購入したXら債権者が、販売業者Y株式会社について破産手続開始申立て。債権者が破産の申立てを行う場合、@債権の存在、A破産手続開始原因の事実を疎明しなければならない(18条2項)。@は不法行為に基づく損害賠償債権であり、認められたが、Aの「支払不能」の認定が問題となった(「支払停止」なら直接証明しやすいが、「支払不能」=『債務者が支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(2条11項)』であって証明が困難)。
【決定要旨】
  間接事実の積み上げ(@〜D)、及び債務者が多数の会員からの損害賠償請求に応じることができない状態にあることを自認した事実(E)から、支払不能の状態は明白であると判示した。なお、間接事実は右のとおり⇒@週刊誌の記事をきっかけに各地の弁護士会に被害者らの相談が殺到し弁護団が結成、A明確に損害賠償請求権を行使する意思を表明する会員数1万6000人余、請求金額は300億円を下らない、BYの資産に巨額の担保権が設定、C会員権販売により集めた資金もYの手元に無く、貸付金等の早期回収も困難、DYの建設請負代金保証債務も未履行で、工事再開の目処立たず。


6 支払停止−支払不能の推定
<事実の概要>
 X(抗告人)は手形の不渡りを出し(約2億円)、銀行取引停止処分を受ける。そこで複数の債権者から破産手続開始決定申立て。うち1社の申立てにつき破産手続開始決定が宣告。これに対しXが抗告。理由は2点。@Xは不渡り後も支払を継続しており、また、債権者からの支払の猶予も受けている。したがって、なお支払停止とはいえない。A仮に支払停止であっても、Xは、建設業者であり、仕掛かり中(8割完成)の建物の所有権を有している。これを完成させ売却すれば12億程度の弁済資金が見込めるので、なお、支払不能とはいえない。
【決定要旨】
 抗告棄却。
1 支払不能を推定せしむる支払停止とは弁済資金の融通がつかないために、一般的、継続的に債務を弁済することができない旨を明示又は黙示的に表明する債務者の主観的な態度を指称するが、債務者振出の巨額の手形が不渡処分に付せられた場合においては、債務者は、その個人的な希望ないし決意はともかくとして、原則として、その後における債務の支払を一般的に停止する意思表示をしたものと解するのが相当である。
 けだし、現在の手形社会において、手形交換所から銀行取引停止処分に付せられるが如きは、信用を重んずべき商人にとっては致命的な打撃を被ることを意味し、何人もその防止対策に尽力するところであるから、巨額の手形不渡の事実は、特段の事情がない限り、…その後における債務の支払を一般的に停止せざるをえない状態に陥ったと認めるほかはなからである。
2 一旦支払停止の状況が生じた後においては、若干の債権者に対し、一時的、散発的に多少の支払がなされたとしても、債権者の数と金額及び弁済の規模と態様を全体的に観察して、継続的、一般的に弁済能力を回復したと認められない限り、未だ支払停止の状態を解消したものとは言い難い。
<コメント>
1 債権者が破産申立てをする場合、破産原因の事実の疎明が必要(18U)。法人の場合、破産原因は支払不能(15)と債務超過(16)がある。
 そして支払停止があれば支払不能が推定される(15U)。これは事実上の推定であって立証者は、推定事実(支払不能)を立証してもよいし、前提事実(支払停止)を立証してもよい。どちらの場合も推定事実の法効果(破産手続開始)を発生させる。
 前提事実(支払停止)が立証された場合、これを覆す立証は本証となり、債務者は支払停止が存在するにもかかわらず支払不能ではないことを立証しなければならない。本件でXがA12億もの弁済資金が見込まれる旨の主張はこれに該当する。
2 支払停止の定義は上述【決定要旨】1.の通り。
 論点として、破産法は否認権行使と相殺禁止において支払停止を要件としているが、破産原因としての支払停止と否認権行使や相殺禁止の場面における支払停止は同義か?
 通説は同義とする。
 これに対し、両者の二義性を認め、破産原因の場合、支払停止は主観的な行為のみでよく、かつ、破産手続開始決定までに支払停止が継続していなくてもよいが、否認権行使・相殺禁止の場合には、主観的な認識のみならず客観的に支払停止が持続している必要があるとする説もある(二義説)。
 どちらの見解に立っても、破産原因の前提としての支払停止が破産手続開始決定時に存在していることが必要。結局、両者の見解の違いは、債権者によって破産申立てがなされた場合、開始決定までに支払停止が継続していたことを債権者が立証するのか(二義説)、それとも債務者にその解消の立証を要するのか(通説)という違い。(なお、通説的見解に立ちながら、一種の間接反証責任として持続性の解消を債務者の負担とする説もある)
 二義説は、破産原因時には説得的であるが、否認や相殺禁止の場面で、債務者の客観的経済状態の悪化の持続を管財人に負担させることになり不当であると批判される。
3 本件で通説的見解に立つと、支払停止の持続性を債権者が立証すべきことになるが、裁判所は事実上の推定を行ってこれを認めた。すなわち手形不渡による支払停止があれば、例外的な場合を除いて、「通常は継続している」との経験則を適用した。事前の手形不渡からダイレクトに開始決定時の支払不能を認定判断することはあくまで省略形であることに留意すべき。


NO7:債務超過の判断要素
【事案の概要】
 Y会社の取締役が失踪したため、債権者への支払が滞った→弁護士が債権者集会の了承を得て債務整理を開始→債権者の一部と弁護士との間で不動産処分方法について対立→そこで債権者Xが破産申立て:YはXに対して1億7300万円および抵当権者Eに対して2億7300万円の債務を負担。そのため3億円以上が債務超過および支払不能であるとして破産申立てをした→Yは破産原因はないとして抗告:@ほとんどの債権者からは18%の弁済を条件に残余債務の免除を受けている。AXの手元には4500万円の現金と少なくとも2億3000万円の評価額建物が2棟ある。BEに対しても5億から6億円の評価額のY個人不動産を別途担保提供している。

【判 旨】:抗告棄却
 「本件債務免除は“一次配当意外に配当原資が得られないときは”という条件付きであると解されるところ、その条件を成就するに足りる事実ない」「法人の破産原因としての債務超過の事実をかくてするに際しては、その法人の財産をもって債務を完済することができるか否かを判断すれば足り」個人的な保証が存するか否かは考慮すべきではない。」


8 破産手続開始申立てに対する事前協議・同意条項の効力 ※東京高裁決定
【事案の概要】 Yは破産会社、Xは破産会社の従業員ら。Xらで組織する労働組合とYとの間で『会社は、組合との事前協議および同意なしには破産申立て等を行わない』旨の覚え書。しかしYは協議なしに自己破産申立て。そこでXが破産申立て&破産宣告はいずれも無効として、抗告。
【決定要旨】 抗告棄却。このような約定があっても、その債権者に対する債務不履行になりうるだけで、破産申立てが違法・無効とはなりえない。理由=破産手続は、強制的に債務者の全財産を管理換価し、総債権者に公平な金銭的満足を与えることを目的とする裁判上の手続であり、いわば総債権者の利益のためのもの⇒一部特定の債権者その他の権利者との間の合意によって申立てを制限されるとするのは相当でない。


9 債権質の設定者の破産手続開始決定申立権
 債務者に対して債権を有する債権者が、当該債権に質権を設定した場合、債権者は当該債権に基づいて破産申立てをすることができるか。
 判旨。債権が質権の目的とされた場合において、質権設定者たる債権者は、質権者の同意があるなどの特段の事情のない限り、当該債権に基づいて債務者に対して破産の申立てをすることができない。
 なぜなら質権の目的とされた債権については、原則として、質権設定者はこれを取り立てることができず、質権者が専ら取立権を有すると解されるところ(民法367条参照)、当該債権の債務者の破産は、質権者に対し、破産手続による以外当該債権の取立てができなくなるという制約を負わせ(100T)、また、本件のように当該債権の債務者が株式会社である場合には、会社の解散事由となって(会社641(6))、質権者は破産手続による配当によって満足を受けられなかった残額については通常その履行を求めることができなくなるという事態をもたらすなど、質権者の取立権の行使に重大な影響を及ぼすものであるからである。


NO10:国庫仮支弁の必要性
【事案の概要】
 Xは破産申立て。
 原審は破産宣告を行うための費用が3000万円必要と判断。
 ところがXは破産予納金として1000万円以上は用意できず。
 このような状況の下で原審は@Xの資産は換価価値が低く、一般債権者にとって配当が期待できない結果、破産的精算を行う意味が乏しい、A破産手続による公益的要請も認められない、B仮支弁しても費用を回収できる見込みがない以上国庫仮支弁の存在も重視できない、という理由から本件破産申立ては権利濫用として許されないと判断。
 そこでXは、破産廃止制度がある以上配当可能性が乏しいことをもって破産宣告を否定する理由にはならないはずだ、として抗告。

【判 旨】:抗告棄却(確定)
 「破産費用を常に国庫に立て替えを求めうると解するのは疑問がある。立替金を回収できない場合」「私利を追求した一企業の倒産の後始末まで国民の負担で行うことまで法が予定し、国民が許容しているとは考えられない」「個人消費者の自己破産申立ての場合であって、費用を負担されることが酷であるとか、公益上の必要性が特に強い等の例外的な場合に限り、仮支弁出来るにとどまる」


posted by あひるねこ at 00:00| とうさん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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