2009年10月06日

とうさん100選51−60

51 手形の譲渡担保権者の地位
 破産者から手形債権につき譲渡担保の設定を受けた債権者が、回収した手形金を破産手続開始決定後の遅延損害金に充当することは許されるか(@事件)。また更生事件において更生債権者は譲渡担保手形を更生計画によらないで私的に実行し、自由に取り立てることができるか(A事件)。
 @事件について。いわゆる商業担保手形貸付の法律関係は譲渡担保権である。よって破産債権者は別除権者として破産手続によらないで手形金を取り立て弁済に充当することができる。
 そして右譲渡担保権で担保される債権の範囲については明文上制限がなく、本件契約により生ずる一切の債権に及ぶことを推認できる。
 そうであれば右譲渡担保権の担保する債権は、その遅延損害金にも及ぶ。
 A事件について。更生手続においては、更生債権として取り扱われる場合には、更生手続開始後において更生計画によらないで自由に取り立てることができるのに対し、更生担保権(更生法2条11項)として取り扱われると更生手続に服さなければならず、譲渡担保権の実行は許されない(更生法47T、50T)。
 そして譲渡担保手形は、いわば隠れた質入裏書というべきものであり、少なくとも当事者間においては右手形は依然として更生会社の財産とみることができる。


NO52:手形上の商事留置権の破産手続開始決定後の留置的効力
【事案の概要】
 A社はY銀行に手形の割引を申し込み、手形をY銀行に預けた。その後Aは破産宣告をうけ、Xが管財人に選任。XはYに対して手形の返還を請求。YはAに対する貸金債権を被担保債権とする商事留置権を主張し、手形返還を拒絶し、且つ手形金を受け取った上で被担保債権の弁済に充当。
 そこでXは不法行為が成立するとして手他が金相当額の損害賠償を求める訴えを提起。
原審でXの請求認容→Y上告。

【判 旨】:破棄自判・上告棄却
@手形に関する商事留置権は、破産法66条により破産手続開始決定後は特別の先取特権となるが、それに伴い留置権能が消滅するか否か
「手形に関する商事留置権を有する者は、破産宣告後においても、右手形を留置する権能を有し、管財人からの返還請求を拒むことが出来る」
「けだし、破産法66条の“これを先取特権とす”との文言は、当然には商事留置権者の有していた留置権能を消滅させる意味とは解されず、…破産法66条が商事留置権を特別の先取特権として優先弁済権を付与した趣旨に照らせば、…破産管財人に対する関係においては、商事留置権者が適法に有していた手形に対する留置権能を破産宣告によって消滅させる…ことを法が予定しているとは考えられない」
A取り立てた金員を銀行が弁済に充当できるか
「銀行取引約款4条4項の定めは抽象的包括的であって…右条項を根拠として…処分できるということはできない」
「しかし、期日未到来の手形の換価方法は、民事執行法によれば原則として執行官が手形交換により取り立てるものであるところ、銀行による取立ても手形交換によってされることが予定…取立てをする者の裁量等の介在する余地のない適正妥当な方法によるものである点に変わりない…銀行が右のような手形について適法な占有権原を有し、かつ特別の先取特権に基づく優先弁済権を有する場合には、銀行が自ら取り立てて弁済に充当しうるとの趣旨の約定をすることには合理性」がある。
よって、本件事実関係の元では銀行の管財人に対する不法行為は成立しない。


53  破産により特別先取特権とされる商事留置権と他の担保権との優劣 
【事案の概要】
  XがA所有の土地に根抵当権設定。その後AはYとの間で、本件土地上に建物建築請負契約。Y着工し、建物ほぼ完成。Aに破産宣告。
  Xが根抵当権に基づき、本件土地の競売を申し立て。しかし執行裁判所はYの本件土地に対する商事留置権を認め、土地評価額から商事留置権を控除すると剰余が生じないとして、競売手続を取消し。そこでXは取消決定に対し執行抗告。
【決定要旨】 原決定取消。
  確かにYは、本件土地にも商法521条の商事留置権を取得した。しかしAの破産宣告により、66条1項によって、特別の先取特権とみなされることとなる。
  破産宣告後に商事留置権者が当該物件を留置していなければならない合理的理由はないから、原則として破産宣告により商事留置権者の目的物に対する留置権能・使用収益権能は失われる。
  Yの特別先取特権とXの根抵当権の優劣は、物件相互の優劣関係を律する対抗関係として処理すべき→特別の先取特権に転化する前の商事留置権が成立した時と、抵当権設定登記経由時との先後によって決すべき。
【解 説】 商法521条の「物」には不動産は含まれないとする有力説もある。本件は含まれるとした裁判例のひとつ。


54 動産売買の先取特権による物上代位と買主の破産
 動産売買先取特権を有する売主が、破産者たる債務者から当該目的物を譲り受けた第三者に対して物上代位権(民304T)を行使するためには、売主自らが他の債権者よりも先に差押えをしなければならないか。同条が「払渡し又は引渡しの前に差押え」を要求している趣旨が問題。
 この点、上記の趣旨は特定性維持または優先権保全という趣旨に加え、第三者を過誤払いの危険から保護するという趣旨も含む。
 よって他の債権者よりも先に差押えをする必要はない。
 なお最判平成17年2月22日は、抵当権と異なり公示方法の存在しない動産売買の先取特権について第三者を保護する趣旨を含むので、物上代位の目的債権が譲渡され対抗要件が具備された後は、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできないと判示した。


NO55:破産財団から放棄された財産を目的とする別除権の放棄の意思表示をする相手方
【事案の概要】
 A社について破産宣告がなされ、Xが管財人に選任。YはAに破産債権を有し、それを被担保債権としてA所有の甲不動産に第二順位の根抵当権の設定。
甲不動産第一順位の根抵当権者の申出に基づき甲につき競売開始決定。Xは甲不動産を破産財団から放棄することとし、Yを含む別除権者に“甲を放棄すること・別除権者が破産配当に加わるためには別除権を放棄する必要があること”を通知した。
その後Xは最後配当に着手したが、配当表にはYは入っていなかった。
一方、YはA社の破産宣告当時の取締役であるBに対し、甲を目的とする別除権を放棄する意思表示をした。
以上の事実関係の下、Yが自分も最後配当に加えるべきだ、と主張し、配当表に対する異議申し立てをした。
 原原審では異議申し立てを却下。
 原審ではこれを取り消した。Xが許可抗告を申し立て。

【判 旨】:異議申し立て却下。
「破産財団から放棄された財産を目的とする別除権につき、別除権者がその放棄の意思表示をすべき相手方は、破産者が株式会社である場合も含め、破産者である。また、株式会社が破産宣告を受けて解散した場合、破産宣告当時の取締役は当然に清算人になるのではなく、管理処分権を失うと解すべきであり、」「したがって別除権放棄の意思表示を受領し、その抹消登記をすることなどの管理処分権は、清算人によるべきである」
「そうすると、破産者が株式会社である場合に破産財団から放棄された財産を目的とする別除権につき、別除権者が旧取締役に対してした別除権放棄の意思表示は、これを有効と見るべき特段の事情が存しない限り無効を解するのが相当」


56 ファイナンス・リースと担保権消滅請求手続 ※4版新規
【事案の概要】
 Yリース会社→X会社へ、本件動産につきフルペイアウト方式(★)によるファイナンス・リース契約を締結。X、これに基づき本件動産の引渡しを受ける。本件リース契約には、Xにつき仮差押、破産・会社更生の申立て等があったときは、Yは催告なしに契約解除・損害賠償請求として残リース料の請求ができる旨の特約有り。
 11月6日、別の債権者がXの不動産を差押え。
12月5日、X民事再生手続開始の申立て。
そこで12月24日、YはXに対し本件リース契約解除の意思表示(残リース料3000万円)。
  翌年1月12日、Xに再生手続開始決定。
  そこでXは、Yがリース契約に基づき本件動産につき所有権を留保し、担保権を有することを前提として、民再148条1項に基づき、Yを相手方として、本件動産の価額に相当する金銭(82万円)を納付して、本件動産上に存する担保権を消滅することにつき許可の申立て。
 問題点: @リース契約が担保権消滅許可の対象となるか。
A民事再生申立てを解除条件とするような特約の有効性。
【決定要旨】 Xの申立てを棄却。
  フルペイアウト方式によるリース契約の物件引渡しを受けたユーザーにつき再生手続開始決定があると、未払のリース料債権はその全額が再生債権となり、リース会社はリース物件につきユーザーが取得した利用権について、その再生債権を被担保債権とする担保権を有する。
  しかし本件では、再生手続開始前に、リース契約が特約により有効に解除され(A)、これによりXの利用権は消滅→YはXの利用権という制限のない、完全な所有権を取得した。
  よって、再生手続開始当時、本件物件はすでにXの財産ではなく、民再148条1項の担保権消滅許可の申立てをなしうる場合ではない。
  なお本件解除留保特約の有効性(A)→ 最高裁判例は倒産手続・会社更生手続の事案で、「更生申立てがあったら売買契約を解除できる」という特約を無効としている。
しかし、会社更生と民事再生では手続が以下のように異なる:
会社更生: 担保権者も手続に全面的に服すべきものとされ、担保権実行は禁止。
民事再生: 担保権は手続に取り込まれず、別除権として手続によらず行使可能。
よって、特約の効力につき両手続を同一に解することはできず、民再では有効。
【解 説】 問題点Aが有効とされると、実際には問題点@のリース契約が担保権消滅許可の対象となるか、という問題はあまり出てこなくなる。本決定は原則としてリース取引も担保権消滅許可の対象になることを前提としているようである。
  ★フルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約: 設備投資をする際、ユーザーが直接購入するのではなく、リース会社が購入して、これをユーザーに賃貸する形式を取る契約。リース料という形で分割的に購入代金を全額回収する。税務上のメリットから普及。


57 相殺の可否(1)−手続開始後の停止条件成就
 67条2項は破産債権者が破産債権を自働債権とし、停止条件付きや期限未到来の債権を受動債権として相殺することは、破産手続開始決定後、条件不成就の機会や期限未到来の利益を放棄して直ちにする場合は適法であると規定している。
 では破産債権者が破産手続開始決定後直ちに相殺せず、条件成就や期限到来を待ってする相殺も許されるか?(71条1項1号の相殺禁止に触れないか)
 同条項の趣旨は、破産債権者がする相殺の担保的機能に対して有する期待を保護しようとする点にあり、また相殺権の行使に何ら限定も加えられていない。そして破産手続においては、相殺権の行使時期についての制限が設けられていない。
 したがって条件成就後や期限到来後にする相殺も相殺権の濫用と認められる場合など特段の事情がない限り原則として有効であり、71条1項1号とは抵触しない。
 (民事再生法93条、会社更生法49条、会社法517条にも類似の規定があるが、67条2項に該当する条文はない。本判例のロジックによれば、民事再生・会社更生・特別清算の場合には上記事例で相殺は否定されることになるだろう)


NO58:相殺の可否
【事案の概要】
AはY信用金庫との間で、信用金庫取引約定に基づき、は取引先から取得した手形について、Y信用金庫との間で取立委任裏書きをなし、必要な都度、手形割引を受ける等していた。
Aは取引先の倒産により支払い停止、破産宣告を受けた。Xが管財人に選任。
Yは12通の手形について取立て委任を受けていたが、Aの支払停止後これを知りつつ破産宣告前に2通(甲手形)、破産宣告後に10通(乙手形)を取り立てていた。XはYに対して、甲手形について取り立て金の引渡し、乙手形について手形金相当額の不当利得返還請求。
Yは、取引約定に基づきAに対して取得した手形の買い戻し請求権とAのYに対する上記手形取立て金引渡し請求権及び不当利得返還請求権とを対当額で相殺すると主張。
原審はX請求認容。Yが上告。

【判 旨】:一部破棄自判・一部上告棄却。
「破産債権者が、支払い停止および破産申立てのあることを知る前に、破産者との間で“破産者が債務の履行をしなかったときには破産債権者が占有する破産者の手形等を取り立てて又は処分して、その取得金を債務の弁済に充当する事が出来る旨”の条項を含む取立て約定を締結の上、支払いの停止又は破産の申立てのあることを知った後、破産宣告前に右手形を取り立てた場合には、破産債権者が破産者に対して負担した取り立て金引渡し債務は、71条2項2号にいう“前に生じたる原因”に基づき負担したものに当たる」
「けだし、債務者が債権者に対して同種の債権を有する場合には、対立する両債権は相殺ができることにより、互いに担保的機能を持ち、当事者双方はこれを信頼して取引関係を持続するのであるが、その一方が破産宣告を受けた場合にも無制限に相殺を認めるときは、債権者間の公平・平等な満足を目的とする破産制度の趣旨が没却されることになるので、同号は、本文において破産債権者が支払いの停止又は破産の申立てのあることを知って破産者に対して債務を負担した場合に、相殺を禁止すると共に、但し書きに置いて相殺の担保的機能を期待して行われる取引の安全を保護する必要がある場合に相殺を禁止しないこととしているものと解される」
「破産債権者が前記のような取引約定のもとに破産者から個々の手形について取立て委任を受けている場合、…相殺に供することが出来るという破産債権者の期待は、同号但し書きの趣旨に照らし、保護に値する」


59 相殺の可否(3) 手形買戻代金債権と「前に生じたる原因」
【事案の概要】
 2月22日、Y銀行、手形取引契約に基づく手形割引により、A会社に15万円貸付。
 3月2日、A会社支払停止。
 11月6日、A会社破産宣告、X管財人就任。
 Xは、Y銀行に対し、Aが15万円の定期預金債権を有すると主張。
 Y銀行の主張→手形割引契約により、債務者の支払停止によって貸付金の弁済期が到来したとみなされる。そこで4月8日に、Aに対して貸付金を自働債権、定期預金を受動債権として相殺した。
【判旨】 Xの上告棄却。
  割引依頼人の支払停止を理由として銀行が取得した手形買戻代金債権は、支払停止後に取得した債権ではあるが、その基礎は手形を割り引いたときにあるのであって、「支払の停止を知りたる時より前に生じた原因」(現72条2項2号)にあたり、相殺禁止にあたらない。


60 相殺禁止規定に違反した相殺を有効とする合意
 破産債権者のなした相殺が71条1項3号で相殺禁止に触れるものであった場合、この相殺を有効とする破産管財人と破産債権者の合意は有効か。
 本件では破産債権者が有する別除権を放棄する代わりに管財人が相殺禁止を主張しないとの合意があったようである。
 最高裁は次のように判示。破産債権者が支払の停止を知ったのちに破産者に対して負担した債務を受動債権としてする相殺は、破産法上原則として禁止されており、かつ、この相殺禁止の定めは債権者間の実質的平等を図ることを目的とする強行規定と解すべきであるから、その効力を排除するような当事者間の合意は、たとえそれが破産管財人と破産債権者との間でされたとしても、特段の事情がない限り無効であると解するのが相当である。


posted by あひるねこ at 00:00| とうさん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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