2009年10月02日

とうさん100選11−20

11 保全処分の対象 退職前の退職金請求権 ※福岡高裁判決
【事案の概要】 AはY市職員。Y市を退職し、自己破産申立て。Y市は退職金558万円の支給決定。破産裁判所は破産宣告前の保全処分として、Y市に対し、退職金全額の支払いを禁じる仮差押決定送達。しかしY市は、Aが借金していたY市職員共済組合等に対し317万円を支払い、さらに税を控除して、212万円を管財人Xに支払い。
  そこで管財人Xは、Y市が、保全処分にもかかわらず、退職金を共済組合等に払ったのは無効として、退職金支払いを請求。一審はXの請求認容。
【決定要旨】 二審は原判決取消・請求棄却でX敗訴。
退職金は、4分の3が差押禁止財産(民執152条2項)。差押え禁止財産は、破産者の自由財産⇒破産財団に組み込まれるのは、4分の1が原則。
たしかに、旧民訴618条2項但書によれば、退職金も事情によっては裁判所の許可を得て2分の1まで差押え可能⇒2分の1まで破産財団に組込み可能。しかし、Xからは4分の1を超える部分について、破産財団に帰属せしめる事由のあることにつき、主張立証がない⇒破産財団への組込みは原則通り4分の1。本件では558万円のうち、4分の1を超える212万円がすでに破産財団に組み込まれており、それ以上退職金から破産財団に組み込む部分は存在しない。
※ 要は、差押え禁止財産は原則として財産保全処分の対象とならないということ。


12 弁済禁止保全処分の効力−失権約款
<事実の概要>
 売主X・買主A間の建設用機械の所有権留保売買契約を締結。@代金弁済まで所有権留保し、その間Aに本件機械を無償貸与する旨、および、A手形の不渡りまたは倒産手続開始の申立て原因となる事実が発生したときは、Xは無催告で契約を解除できる旨、B代金支払方法は毎月手形を振出して行う旨、が契約内容。
 Aは代金の約3分の2を支払った段階で会社更生手続申立て。裁判所が更生法28条に基づく弁済禁止の保全処分を命じた。そのため手形が不渡となり、Xは特約により契約を解除し、管財人Yに対し、更正法64条に基づく本件機械の引渡請求提起。
 1審・原審とも原告敗訴。原告上告。
【判旨】
 上告棄却。
 通常は債務不履行によって所有権留保売買契約を解除し、目的物を返還請求することはできる。
 しかし更生法に基づく保全禁止の仮処分が命じられた時は、これにより会社はその債務を弁済してはならないとの拘束を受けるのであるから、その後に会社の負担する契約上の債務につき弁済期が到来しても、債権者は、会社の履行遅滞を理由として契約を解除することはできないものと解するのが相当。
 また債務者に更生手続開始の申立の原因となるべき事実が生じたことを売買契約解除の事由とする旨の特約は、債権者、株主その他の利害関係人の利害を調整しつつ窮境にある株式会社の事業の維持更正を図ろうとする会社更生手続の趣旨、目的(1条)を害するものであって認められない。


NO13:破産手続開始決定に対する株主の即時抗告申立権
【事案の概要】
 株主2人の株式会社の破産宣告がなされた際、一人の株主Xが即時抗告を申し立てた。
 抗告理由は@株主は破産宣告により地位を侵害される以上、重大な利害関係を有する。よって不服申し立て出来ないのは法感情にそぐわない、A会社の破産宣告により、株主は株主権を行使できなくなるとの重大な権利制限を受けるから、即時抗告権が認められるべき、というものであった。また、Xの株主権を喪失させる目的で破産申立てがなされた、とも主張。

【判 旨】:抗告却下(確定)
 「破産法は“破産手続等に関する裁判について利害関係を有する者”に即時抗告権をみとめている(9条)から」「破産宣告に対してはこれによって法律上の利益が直ちに害される者が利害関係人として即時抗告の申立てをなし得る」。「株主は会社の破産終結による会社の法人格の消滅に伴いその地位を喪失することになるが」「直ちに株主権が消滅したり、自益権や共益権に変更が生ずる事になるものではない」。「そうすると株主は…利害関係人にはあたらない」


14 破産手続開始決定に対する即時抗告期間 ※4版の新掲載判例
【事案の概要】 債権者Aが、破産者Xの破産を申立て。5月15日に破産宣告、同日Xに送達。同月25日にX即時抗告。同月29日に破産宣告決定が官報に掲載・公告。
  争点は、即時抗告期間。通常は破産13条で民訴準用→民訴332条で裁判の告知を受けた日から1週間。しかし公告があると、破産9条後段で公告の日から2週間。送達と公告の両方がなされた場合、いずれを基準とするかが問題となった。
【決定要旨】 最高裁は「公告説」をとることを明確にした。「…多数の利害関係人について集団的処理が要請される破産法上の手続においては不服申立て期間も画一的に定まる方が望ましいこと等に照らすと、上記決定の公告のあった日から起算して2週間であると解するのが相当である」。
【解 説】 改正前は裁判はすべて送達とされていたが(旧法111条)、改正後は送達すべき場合が個別に規定され、それ以外は通知で足りることになった。⇒今後送達と公告が競合する場面はあまり多くないかも(免責許可決定とか)。


15 有限会社の破産と火災保険契約約款の免責条項の「取締役」
 火災保険契約において免責条項の中に「取締役…の故意、重過失、法令違反」の場合が明記されていた場合、破産手続開始決定後の取締役は同条項の「取締役」に含まれるか。取締役は破産によって地位を失うのではないか?失わないとしても管理処分権を奪われた取締役は同条項の「取締役」に含まれるのか?が問題。
 判旨。有限会社の破産手続開始決定によっては取締役の地位は当然には失われない(最判昭和43年3月15日は、破産手続開始決定と共に同時破産廃止の決定を受けた場合に取締役が当然に清算人になるものではないことを判示したもので本件とは事案を異にする)。
 また本件免責条項は、免責の対象となる保険事故の招致をした者の範囲を明確かつ画一的に定めていること等に鑑みると、本件「取締役」の意義については、文字どおり、取締役の地位にある者をいうと解すべきである。
 (判例は破産手続開始決定によっては取締役の地位を失わないとする非終任説に立つことを明らかにした。よって管財人の管理処分権に含まれない組織法上の行為、例えば総会の招集や会社設立無効の訴えの応訴などは、当然に取締役の権限に含まれるとした。)


NO16:破産管財人の第三者性(1)
【事案の概要】
 破産管財人Xが、破産者から土地を借りて建物を建てていたが対抗要件を備えていなかったYに対して、建物収去土地明渡請求訴訟を提起した。原審で敗訴したYが上告。

【判 旨】:上告棄却
 「破産管財人は…破産財団の管理機関であるから、破産宣告前破産者の設定した土地の賃借権に関しては、建物保護法1条の第三者に当たる者と解すべきである。」「Yらは…土地賃借権の対抗要件たる登記手続を経由していないのであるから、Yらは破産管財人たるXに対し右賃借権を対抗できないものというべきである」


17 破産管財人の第三者性(2) 民法467条2項の第三者
【事案の概要】 10月15日、A社に破産宣告、Xが破産管財人に就任。
Aは、破産申立て前にYらに対し売買代金債権を取得、10月4日、Zにこれら各債権を譲渡。10月6日、AからYに譲渡通知書を簡易書留で送付。
  管財人Xは、Zに対し、この債権譲渡は問題がある旨通知したうえ、Yらに対し代金支払い請求。Zは債権が自己に属する旨主張して、独立当事者参加。
  控訴審は、管財人Xは差押え債権者と同一の地位に立ち、民法467条2項の第三者に該当するので、Zは破産宣告前に対抗要件を具備しないとXに対抗できないとした。Zの主張する通知には「確定日付」等が認められない。
  Zは、XとZは二重譲渡に準じた関係にないとして上告。
【判旨】 Zの上告棄却。「指名債権の譲渡を受けた者は、譲渡人が破産宣告を受けた場合には、破産宣告前に右譲渡について民法467条2項所定の対抗要件を具備しない限り、右債権の譲受をもって破産管財人に対抗しえないものと解すべきである。」


18 破産管財人の第三者性(3)破産管財人に対する融通手形の抗弁
 手形の振出人は融通手形の抗弁でもって破産管財人に対抗できるか。
 判旨
本件手形は運転資金を融通する目的で振り出されたものであり、なんら破産者との間に対価関係があって振り出されたものではないから、振出人は融通手形の抗弁を管財人に対抗できる。
 (管財人の第三者性について、通謀虚偽表示(民法94条2項)においては第三者性を認め、本問では認めなかった。この整合性につき、管財人は破産者の承継人という地位と差押権者としての地位を併有することから説明する説や手形法17条プロパーの問題として説明する説があるが割愛。)


NO19:破産会社に対する会社不成立確認訴訟の被告適格
【事案の概要】
 合資会社Aが株式会社Yに組織変更した。その後Yは破産宣告を受けた。
 ところが組織変更の際、法定の広告手続などを怠ったとしてXらが右組織変更は無効であるとして、Yに対して取締役を代表し不成立確認訴訟を提起。原審でYの不成立が確認されたため、Yが上告(Yの上告理由として本件の訴えはYの破産財団に直接影響があるので取締役ではなく破産管財人を相手方とするべきである、とした)。

【判 旨】:上告棄却
 「法定の広告手続を経ないときは…組織変更は全く無効」「Yの成立が否定されるか否かは破産手続の遂行には影響がない」「破産管財人は破産財団の管理処分につき権限を有するに過ぎない」「Yの不成立確認を求める本訴のごとき会社の人格に関する訴えはもとより、破産財団に関する訴えにあらざることが明白」なので「破産管財人を相手方として提起するものにあらず」「法定代理人たる取締役により代表されるY会社を相手方とするべき」


20 責任追及等の訴え ※東京地裁決定。4版新判例
【事案の概要】 KはA社の株主。Kは、A社取締役のB〜E、総会屋Fに対し、利益供与を理由として株主代表訴訟。その後A社に破産手続開始、Xが管財人。
Xは原告Kの地位の受継を申し立て。Bらは、会社の破産により、株主は当事者適格を失い、訴訟は当然終了するとして、異議申し立て。
【決定要旨】 受継申立て認容。
株主代表訴訟は、株主が会社に代位して取締役に対する損害賠償請求権を行使するもので、債権者代位訴訟とその性質を同じくする。

債権者代位訴訟において債務者が破産した場合、代位債権者は代位訴訟の当事者適格を喪失する。その場合破産管財人は、債権者代位訴訟の訴訟物の処分権者であり、当該訴訟を継続させるかどうかの判断は、破産管財人の判断に委ねるのが相当⇒民訴125条1項(削除済)、破産45条1項準用により中断し、破産管財人において受継できる。

右に述べたところは、債権者代位訴訟とその性質を同じくする株主代表訴訟にも当てはまる。会社が破産した場合、損害賠償請求権は破産財団に属する権利であるから、会社の破産によって訴訟は中断し、管財人においてこれを受継できると解すべき。
なお傍論で、管財人は受継を拒絶し、別訴訟を提起することもできるとした。
【解 説】 手続開始後、株主に代表訴訟の追行権限があるかどうかの対立。
否定説=通説・本判例。
@ 役員に対する損害賠償請求権は会社の財産であり、管理処分権は管財人に属する。
 A 株主代表訴訟は、役員と会社経営陣との人的関係に由来する提訴懈怠可能性を懸念したものであるが、管財人は利害関係人に対して善管注意義務を負うし、裁判所の監督に服するから(75条)、提訴懈怠の懸念は生じない。
肯定説=有力説。
@ 株主には会社とは独立に代表訴訟を提起する固有の権限があり、破産手続開始後も当該権限は失われない。
A 善管注意義務では十分でない。従前の取締役が管財人に就任する場合(会社更生67条3項参照)もありうる。


posted by あひるねこ at 00:00| とうさん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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